工場外部の点検も忘れずに
製品に異物として混入する昆虫には、意外と工場外部で生息しているものが多いです。
これらは外部侵入(型)昆虫と呼ばれ、一般に搬入出口のような大きな開口部から侵入し、工場内部でさらに奥まで移動分散します。
最終的には製品の充填室や包装室まで到達し、異物として製品に混入してしまうのです。
外部侵入昆虫の中でよく問題となるのは、ユスリカ、カ(蚊)、クロバネキノコバエ、タマバエ、ガガンボ、アブラムシ、ヨコバイ、ガ(蛾)などです。
もしモニタリングトラップで同一の昆虫が多く捕獲された場合は、その昆虫が施設内部で発生している可能性が高いです。
いっぽう、様々な昆虫が多く捕獲された場合は、屋外から施設内に侵入している可能性が高いです。
昆虫の活動が盛んな時期には、屋外に設置された外灯や自動販売機などに飛来する昆虫を確認し、工場外部ではどんな昆虫が活動しているのかを知っておく必要があります。
また、工場敷地内の緑地帯も定期的に点検し、芝生や植栽に潜んでいる昆虫を確認し、工場内部で捕獲される昆虫と比較すると、屋外から侵入する昆虫の発生源や生息箇所が発見できる場合があります。
工場を美化したいとのことで、工場の出入り口付近にパレットやプランターなどを設置すると日陰や湿気を好むヤスデ、ムカデ、ゲジ、ダンゴムシ、ワタジムシ、ハサミムシ、コオロギ、ゴミムシなどの生息箇所となります。
特に木製パレットでは顕著です。
本来こういった徘徊性昆虫は、石や朽木の下などの比較的湿潤な所に生息しています。
しかし、雨が降り地面が湿るとわらわらと活動を始め、日が当り地面が乾燥してくると、日光を避けて物陰に隠れる習性があります。
したがって屋外で工場周辺に物を放置しておくと、これらの恰好の住処となります。
また、工場の建屋に沿って植栽しているのをよく見かけます。
植栽は上記のような徘徊性昆虫の棲み処となるばかりでなく、ユスリカ、クロバネキノコバエ、タマバエ、アブラムシ、ガなどにとっての潜み場所にもなります。
飛翔性昆虫も日中は植栽の中で休んでいることが多いのです。
植栽が伸び放題で枝葉が工場の壁面に触れていた場合、昆虫にわざわざ工場内部への侵入機会を与えてやることになります。
植栽がどうしても必要だとしても、工場建屋の壁から少なくとも5m、できれば10m以上は離すようにしましょう。
工場敷地内に昆虫の誘引物があるかどうか確認し、もし危険性が認められた場合は、早急に防虫対策を講じる必要があります。
多くの防虫担当者は、工場内部(施設、資機材、残滓など)の管理を中心に内部発生昆虫に対しては防虫対策を実施する傾向がありますが、昆虫の活動が盛んな時期は、工場外部にも目を向ける必要があります。
工場外部に粘着シートなどの非誘引型トラップを用いて昆虫相調査を行うのも一つの手です。
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