工場や倉庫でよく問題となる内部発生アリ
工場や倉庫ではアリが問題になることがあります。
この場合、いくつかのパターンが考えられますが、大きく「工場外部からアリが侵入する」パターンと、「工場内部でアリが発生する」パターンに分けることができます。
今回は屋内でアリが発生するケースについて説明します。外部から侵入するアリについてはこちらをご覧下さい。
内部でアリが発生するケースは、食品工場のように水分を大量に使い、アリにとっての餌となる食材を扱っている施設でよく見られます。
大抵のアリは食物を求めて外部から侵入してくるのですが、そういったアリの中には、そのまま工場内部に定着してしまうものがいます。
このようなアリには、イエヒメアリ、ヒメアリ、オオハリアリ、ニセハリアリ、トビイロケアリ、アメイロアリ、サクラアリ、アワテコヌカアリなどが該当します。
このうちイエヒメアリやヒメアリは、特に有名で、建物内部の二重壁や板壁、羽目板などの間、モルタルやコンクリートの裂け目などに営巣し、問題となることが多いです。
前述のようにイエヒメアリやヒメアリは、狭い隙間に営巣するため燻蒸剤もほとんど効果がありません。また、ピレスロイド系殺虫剤を散布して目の前にいる職蟻だけを殺しても根絶には到底至りません。
結局、時間はかかりますが顆粒状のベイト剤を用いて巣全体を殺すのが最も一般的な方法と言えます。
オオハリアリやニセハリアリ属のアリは食品工場の壁内や地下などに営巣することがあります。
オオハリアリは、野外では腐った倒木などに営巣しますので、恐らく壁や床下の構造に使われている木材や地下に放置された建材などを利用していると思われます。
ニセハリアリ属の仲間にも朽木などに営巣するものがいますが、大抵のニセハリアリは土の中に営巣します。
食品工場の地下などで営巣している彼らは餌を求めて製造エリアに侵入し、歩き回りますので、異物として製品に混入する可能性を秘めています。
また、内部に定住し、発生することができるアリを放置すると羽アリが出現する時期に大変なことになります。
大量の羽アリが結婚飛行のために二重壁の間や地下などから室内に飛び出し、製造エリア内を所狭しと飛び回るのです。
こうなると製品に落下混入する恐れがあるため、下手をすると生産ストップという事態になりかねません。
製造エリア内での羽アリの出現は、異物混入防止の観点から非常に大きな脅威と言えます。
工場内部に営巣している場合は、直ちにアリを巣ごと退治しましょう。
誘引する餌の中に遅効性の殺虫成分が含まれたベイト剤が有効です。
アリをコロニーごと駆除するためには、人の目に触れる場所で活動している職蟻だけを殺すのではなく、その職蟻に毒餌を持ち帰ってもらい、コロニー全体に行き渡らせる必要があります。
職蟻は餌を口移しで分け合うのですが、これを栄養交換と呼んでいます。
アリの栄養交換という習性を利用することで、徐々に薬効が現れ、コロニー全員が死滅します。
時間は多少かかりますが、確実な方法と言えます。
ベイト剤が利用できない場合は、フェニルピラゾール系殺虫剤(フィプロニルなど)などを有効成分とした遅効性の液剤も市販されています。
こちらの場合は、栄養交換ではなく、別の習性を利用します。
アリはお互いに体を舐め合ってきれいにするのですが、この習性をグルーミング(毛繕い)と呼んでいます。
職蟻がうろついている所に遅効性の液剤を散布しておくと、職蟻が薬剤に触れます。
そして巣に帰った後、グルーミングを行うことで他のアリもその薬剤に触れたり、舐めたりし、いずれ死んでしまうということです。
こちらも栄養交換と同様に、時間は少しかかりますがコロニー全員を死に至らしめることが可能です。
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