昆虫モニタリングに使用するトラップ
防虫モニタリングに使用するトラップは実に様々なものがあります。
トラップとは昆虫を捕獲するためのツールで、そのほとんどが昆虫の本能的な習性や、昆虫が刺激に対して取る定位行動を利用しています。
習性を利用したものには、ゴキブリ○イ○イのようなスティッキートラップ(床置き式粘着トラップ)やピットフォールトラップ(落とし穴トラップ)、衝突板トラップなどがあります。
また昆虫が敏感に感じる刺激には光、臭気、化学物質(フェロモン含む)、色彩などがあり、それらを利用したトラップもたくさんあります。
したがって、防虫管理に置いては目的や用途(主に捕獲したい対象昆虫)を明確にし、環境にも配慮した最適なトラップを選択する必要があります。
特にペストコントロールの分野では異物混入を考慮しなければならない点で、その他の分野(例えば農業)におけるトラップの選択範囲に比べ、どうしても限定的にならざるを得ません。
捕獲の意味を省いて考えると、昆虫モニタリングにおいて重要なことは、特定のエリア内にどういった種類の昆虫がどれくらい侵入もしくは生息しているのかということを、できるだけ迅速かつ正確に把握するということです。
ですから、昆虫モニタリングを行う際はそのあたりを踏まえてトラップを決定する必要があります。
一般に、各種製造工場や飲食店などの商業施設でモニタリングを行う際に広く使用されているのは粘着式ライトトラップとスティッキートラップ(床面設置式粘着トラップ)だと思います。
ライトトラップ
粘着式ライトトラップはその名の通り、昆虫を光(紫外線)で誘引し粘着テープで捕獲するトラップで、多種多様な飛翔性昆虫を大量に捕獲することが可能です。
過去には同じ原理を利用したものに電撃殺虫器がありましたが、これは殺虫する際に電撃でバチッとやってしまうため、虫体やその破片が飛散する恐れがありますし、受け皿に溜まった死骸もエアコン等からの気流に吹き飛ばされ空中に舞ったり、受け皿の死骸から新たな昆虫が二次発生することも考えられるため、現在は使用機会が減少しています。
スティッキートラップ(床置き式粘着トラップ)
スティッキートラップは徘徊性(歩行性)昆虫を対象としており、床面に配置するだけのシンプルなトラップです。
光で誘引して昆虫を捕獲するライトトラップと比べると地味で随分とパッシブなトラップと言えます。
しかし、下手に昆虫を誘引する要因が無いため、こちらの方が特定のエリアにおける昆虫の正確な生息密度を知る上では都合が良いと考えます。
電源不要でいつでもお手軽に昆虫の調査ができるので重宝します。
スティッキートラップは紙製がほとんどですが、中にはプラスチック製やカバーつきのものもあり、これは粉が多いような現場や、逆に水を多く使用するような環境で力を発揮します。
またスティッキートラップには滅菌トラップと呼ばれるものも存在し、これはγ線で滅菌してあるため、医薬品工場や精密機器工場などのクリーン度が高いエリアで用いられます。ちなみにこれも粘着部分が外に出ていませんので、埃や水に強いトラップと言えます。
フェロモントラップ
これは対象昆虫の性フェロモンや集合フェロモンを利用したトラップで、主に貯穀害虫や乾燥食品害虫のモニターをするのに使用します。
一般に貯穀害虫や乾燥食品害虫は、ライトにも集まりにくくスティッキートラップでも発生量がわかりにくいため、その発生状況を見落としがちです。
それを補い早期に発見するためには、フェロモントラップが最適なのです。
ただし、フェロモンはそれぞれの昆虫に特有のものなので対象となる昆虫種が異なればフェロモンも異なり、すなわち、使用するフェロモンの種類によって捕獲される昆虫種が特定されるので、事前にしっかりと対象種を確認した上で使用しなければ全てが無駄になります。
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