原料などに昆虫が混ざってしまったらどうする?

原料、中間品、製品に混入した昆虫類の抽出方法

原料、中間品、製品に混入した昆虫類の抽出方法

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もし昆虫由来の異物混入クレームが発生した場合、混入経路の推定、混入原因の究明などのための検査が必要となります。

 

その場合はまず、異物混入クレームの原因となった検体以外の混入昆虫や昆虫の脱皮殻および排泄物などの有無、そして納入された商品ロットの他の全ての商品ロットついて、その他昆虫等混入の有無を確認しなくてはなりません。

 

そのためには「試料(原料、中間品、製品など)の採取と前処理」、「異物(昆虫体とその破片および排泄物)の分離、捕集操作」、「捕集された異物の同定(鑑定)」の三つの過程が必要となります。

 

試料(原料、中間品、製品)から昆虫類を抽出する基本的な手法には以下のものが挙げられます。

 

 

・篩わけ法
篩は「ふるい」と読みます。粒度の均一な食品中から、それとは異なる混入異物を分離し、捕集するには、篩わけ法が適用できます。
例えば、穀粒中からネズミの糞を分離する際などに使用します。

 

 

・濾過法
液体、例えばアルコール飲料や清涼飲料中に混入する昆虫体やその破片、排泄物は、濾紙による濾過で分離、捕集できます。

 

 

・ワイルドマントラップによる捕集法(浮上−濾過法)
昆虫体のような疎水性の軽い動物性異物は、それが混入する食品を水溶液とし、少量のガソリンまたはひまし油を加え、攪拌した後に放置しておくと、油の分離に従い油層に浮上してきます。

 

 

また食品試料中から生きた昆虫やダニを抽出するには次のような手法があります。

 

 

・飽和食塩水によるダニ浮上法
コナダニの比重が飽和食塩水の比重(1.190)より小さいことを利用して、ダニを浮遊させ、捕集します。よく似た方法として他にも「簡便法」や「松本の方法」などがあります。

 

 

・食品、食品屑中からの生昆虫の抽出(ベルレーゼファンネル法)
原料から抜き取った試料、食品工場の床に堆積する食品屑から採取した試料中から、昆虫やダニを抽出するには、ベルレーゼ・ツルグレンの装置が用いられます。

 

 

中には以下のような化学反応を用いた検出法、検査法もあります。

 

 

・昆虫排泄物の検出手法
昆虫のほとんどは、代謝終産物を尿酸(uric acid)として排出するので、食品中に含まれる尿酸の定量により、昆虫による被害程度を推定できます。
また、製品中の尿酸を定性的に検出することにより、製品への昆虫の侵入・食害と排泄物による汚染の有無をチェックするのに役立てることが可能です。
この場合、薄層クロマトグラフィーによる尿酸の検出法を使用することが多いです。

 

 

・穀類中に潜伏する虫体、卵の検出
篩の組み合わせにより、穀物中に混入する害虫を選別することはできますが、コクゾウムシ、バクガのような穀粒中に潜伏して生育する害虫(特に若令幼虫)の検出は非常に困難です。
そのため、それらの発見には卵染色法、穀粒浸透染色法、X線浸透法、ニンヒドリン反応法、フクシン染色法などが提唱されています。

 

 

カタラーゼ活性試験
お馴染みのカタラーゼ(過酸化水素分解酵素)を用いた簡易テストです。
生物体内におけるカタラーゼの活性が加熱によって失活する性質を利用して、混入時期が加熱工程以前であったか、それ以後であったかを推定する方法です。


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