防虫管理におけるモニタリングとは?
モニタリング(monitoring)は、一般には「監視すること、また観察し、記録すること」とされており、モニタリングという言葉は実際に様々な業界で使用されています。
したがって、本来ならこのモニタリングという言葉も、○○のモニタリングと呼ばれるべきだと思います。
例えば昆虫のモニタリングなら昆虫モニタリング(防虫モニタリングと呼ばれることもあります)、ネズミのモニタリングなら鼠族モニタリング、製造環境における浮遊菌落下菌などのモニタリングなら環境微生物モニタリングといった具合です。
さて、モニタリングの意義ですが、これは実に様々な方が、それぞれ独自の言葉を用いて定義付けを行っています。
しかし、中には(特にHACCP関連のテキスト)、やたら複雑に書かれているため意味不明なものも多いです。
個人的には「毎回同じ調査手法を用いて、定期的に、各エリアにおける昆虫類の侵入・発生状況および環境を監視すること」と理解しています。
これでもまだ少し難解かもしれませんが、もっと簡単に言えば、昆虫そのものと製造環境の監視ということになるかと思います。
例えば各種製造工場(や飲食店など商業施設)にはあらゆる昆虫が侵入・生息する可能性があり、その生態も様々です。
したがって、まずはどこにどのような昆虫がどれくらいいるのかを正確に把握しなければ、防除なんて到底できません。
そのためにも様々な角度から総合的にモニタリングすることが必要となります。
またそのモニタリングの精度を向上させていくためにも、長期的にデータを蓄積させていくことは非常に重要となります。
軽視されがちですが「毎回同じ調査手法を用いて」や「定期的に」も重要なポイントです。
前回はライトトラップ、今回はフェロモントラップ・・・というように毎回異なった種類のトラップを用いて昆虫モニタリングを行うのはまず無いことだと思いますが、毎回トラップの数や設置場所、モニタリング期間が一定でない例は非常に多いです。
害虫駆除業者(以下、PCOとする)や製造現場の都合上難しいとあきらめている防虫担当者も多いと思いますが、これはとてももったいないことです。
なぜかと言うと、毎回同じモニタリング手法を用いることで、データの比較が可能になるからです。
すなわち、毎回異なったモニタリングをやっていては、せっかく苦労して同定・カウントしたデータが比較できない、仮に比較したとしてもデータの補正に時間がかかる、しかも分析結果の信憑性は低い、結局データを取るだけ無駄だった・・・ということになりかねないのです。
モニタリングはモニタリング結果を活かすことに意義があるのに、データを拾うことで満足してしまってそれが最終目標になってしまっているパターンも多い気がします。
PCOと工場の防虫担当者の双方が昆虫モニタリングの意義を明確に理解しなければなりません。
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