工場で問題となる昆虫の飛翔性
ひとたび工場内に飛来侵入した昆虫は、広い空間を絶食に耐えながら1〜数日間飛び回り、思いがけない所で製品に迷入(混入)します。
徘徊性昆虫(歩行性昆虫)は大抵の場合、何か(壁など)に沿って行動しますが、飛翔性昆虫は空間全体にわたって活動するためその防除は徘徊性昆虫に比べてはるかに困難です。
したがって、工場内における防虫管理は特に飛翔性昆虫に的を絞らなくてはなりません。
飛翔性昆虫には飛翔力の強い昆虫と弱い昆虫がいます。
飛翔力の強い昆虫は翅の翅脈(しみゃく)が発達しており、翅自体も大きくて厚みがあります。
大型のハエや中型以上のハチなどがこれに該当します。
このような昆虫は自力でどこまででも飛ぶことができ、飛ぶスピードもかなり速いです。
逆にユスリカやクロバネキノコバエ、タマバエのような飛翔力の乏しい昆虫は翅脈が発達しておらず(ほとんど見えない状態のものが多いです)、翅自体も小さくて薄く身体も弱々しいです。
そして自力で飛ぶというよりは気流に乗ってふわふわと漂っていると言った方が正しいです。
例えばユスリカはドアやシャッター、窓、換気口など(小型の種では建物外周のごく小さな隙間からも)建物内部に侵入し、飛翔分散し、最終的には衰弱し、落下します。
そして落下した場所が工場の製造・充填・包装ライン上ならば、すぐさま異物混入の原因となります。
ユスリカ成虫の寿命は自然環境下で1週間程度、屋内に迷入してしまった個体は大抵1〜2日程で死亡すると言われています。
工場内に侵入したユスリカは紫外線や気流の影響を受けながらふわふわと空中を漂いますが、最終的には窓際に寄っていくことが多いと思われます。
ユスリカの死骸が窓のさんなどに堆積しているのを見たことがある方も多いのではないでしょうか。
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