モニタリングのメリットとは?
モニタリングは総合的有害生物防除(以下、IPMとする)を行う上で最も重要な項目であり、モニタリングなしにIPMはありえないほどなのですが、では食品工場等においてモニタリングを行うことには一体どのようなメリットがあるのでしょうか?
防虫管理従事者は、モニタリングには様々な利点があるということをすでに知っていると思います。
しかし「なぜモニタリングをする必要があるのか?」ということを漠然とではなくしっかりと理解している方は意外と少ないような気がします。
実際にモニタリングを行う意義は色々とあると思いますが、ここでは考えられるメリットを四つ挙げてみます。
一つ目は、その名の通りモニター(監視)するということです。
例えばIPMによって年間防虫管理を行っているエリアで昆虫が異常に発生したり、最重要管理エリアへ侵入したりした際に早急に対処できます。
これはモニタリングの持つメリットの最も基本的な部分だと思います。
もし、定期的にモニタリングを行っていなかったらこういった初歩的なことにも対処できません。
このように、有事に迅速に対応しなければならないため、モニタリングの結果は早急に出す必要があります。
二つ目は、効果判定が可能だということです。
これは例えば、高速シートシャッターを取り付けたとか、防虫カーテンを設置した、通常とは異なる殺虫剤による防除施工を行った・・・というような、何か特別な防虫対策を講じた際にその前後で効果を判定(評価)することができるということです。
改善する前の数値がわからないことには、改善したことによる効果がわかりません。
つまり継続したモニタリングを行うことによって改善前、改善後の変化が見て取れるばかりか、昨年度や一昨年度と比較ができます。
また、せっかく特別な措置を講じたとしてもすぐに良い結果が出るとは限りません。
しかし、モニタリングさえしていればそれほど悲観することはありません。
モニタリングの結果から様々な分析ができるからです。これは非常に有益なことだと思います。
三つ目として、異物混入クレームに対応できるということが挙げられます。
これは、製品への昆虫由来異物混入クレームがあった際に過去のモニタリングデータから追跡調査が可能であるということです。
例えば、異物混入を引き起こした昆虫種が過去に捕獲された記録があったかどうかを調べることが可能です。
もし異物混入の原因となった昆虫種が、当該製造環境において過去に一度も捕獲されたことの無い種であった場合、この種がこの現場で混入した可能性は非常に低いと考えられます。
このように、モニタリングを常に行っているということは、万が一の際の「保険」にもなり、自社を守る「盾」にもなり得ると言えます。
この保険によって無実が証明できたケースも非常に多いです。
これがもしモニタリングをやっていなければ反論をすることさえもできません。
最後は物理的防除です。
モニタリングには、基本的にライトトラップやスティッキートラップ、フェロモントラップなどが使われます。
電撃殺虫器やファン式ライトトラップなど一部例外もありますが、これらのトラップはほとんどの場合捕虫紙(粘着テープ)によって昆虫を捕獲するというスタイルが採用されています。
粘着テープで捕獲するメリットは、いったん捕獲した昆虫を逃がさない、もしくは飛散させない、後で同定およびカウントしやすい、処理が簡便である、などが挙げられます。
これはつまり、モニタリングを行っているということは製造環境において昆虫を少なからず捕獲しているということであり、同時に物理的防除をも行っていると言えるのです。
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