異物混入におけるリスクマネジメント
異物混入とは読んで字のごとく、製品中に異物が混入することです。
そして異物には、昆虫、人毛、獣毛、ガラス片、樹脂、石、金属、動物の糞、植物、殺虫剤、微生物などありとあらゆるものが含まれます。
HACCP的には、製品の品質表示欄に記載されていなければ何であろうが異物と言えます。
また昆虫や人毛など、生物由来の異物による混入事故は高頻度で起こります。
そのため、昆虫や人毛を対象に異物混入対策を行うことが望まれます。
さて、最近リスクマネジメントという言葉が様々な業界で使われるようになってきました。
これは、主として企業活動に伴う様々なリスクを最小限に抑える管理運営方式のこと意味し、度々RMと略されます。
では、製造業者にとって異物混入におけるリスクマネジメントとは一体どういうことなのでしょうか。
異物混入におけるリスクマネジメントの目的は、「発生させない」、「再発させない」、「損失を抑える」ということになろうかと思います。
その方法としては、「総合有害生物防除(IPM)に基づいた防虫管理と対策」、「各種認証規格の導入」、「各種保険への加入」などが挙げられます。
保険にはPL保険やリコール保険などがあります。
我が国にはPL法(製造物責任法)というものがあり、製造したものには最後まで責任を持たなくてはなりません。
例えば、実際に食品工場でPL事故(もちろん異物混入もその一つです)が発生した場合、莫大なコストが発生し、それを全て自社で賄わなくてはなりません。
しかしながら、全ての企業が数千万、数億単位の額を払えるわけではありません。
そういった際に適用される保険がPL保険なのです。
ちなみにPLとはProduct Liabilityの略です。
またリコール保険は製造物リコール(回収)費用保険とも呼ばれます。
次に各種認証規格についてですが、例えば食品工場の場合、ISO22000、HACCP、AIB、JAS、GMPなど実に様々なものがあります。
そして大抵の食品工場は自社基準以外にも、こういった認証規格に準じて食品を製造しています。
しかし、よく考えてみて下さい。
保険というものは何らかの事故が起こってから適用されるものであって事故を未然に防ぐものではありません。
あくまでも保険は保険です。
また各種認証規格への準拠は、企業やブランド、製品への付加価値をつけますが、それに準拠していれば防虫管理は完璧かというと、決してそうではありません。
実際にこのような規格は昆虫だけを対象にはしていないからです。
したがって、未然に異物混入などのリスクを防ぐためにはIPMによって自社独自の防虫管理を行う必要があるのです。
神戸市内で学校給食への異物混入事故が相次ぎ、市が民間業者に対して衛生管理の徹底を求めたというニュースです。
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