昆虫の生態を知って防除に役立てよう!

クロバネキノコバエ

クロバネキノコバエ

異物混入,防虫管理,外部侵入昆虫,生態,防除

 

クロバネキノコバエはハエ目クロバネキノコバエ科に属するコバエで、昔はクロカと呼ばれていました。
実はクロバネキノコバエは黒翅茸蠅という割に黒い翅を持つ種はそれほど多くありません。
そのためこの分類群をクロキノコバエ科と呼ぶ専門家もいます。
クロバネキノコバエは日本からは11種が記録されています。

 

成虫の体長は1〜4oで体全体が黒褐色、翅は黒色半透明〜透明です。脚の脛節に棘を持ちます。

 

幼虫の体長は3〜5.5oで白色のウジ虫のような形ですが、頭部は光沢のある黒色です。

 

成虫は正の走光性が強く、灯火によく集まります。
昆虫モニタリングライトトラップでも多数捕獲され、ユスリカと並び優占種となることが多いです。

 

農場や工場でよく問題となるチビクロバネキノコバエの雌は窓や壁に静止したり、植木鉢の周囲を歩き回ることが多いのに対して、雄は盛んに飛び回ります。

 

工場内に侵入したクロバネキノコバエの成虫は、露出した食品や包装資材などに迷入し、頻繁に異物混入事故を引き起こします。

 

幼虫は腐植物質やキノコ、肥料、動物の排泄物、作物の根、貯蔵中の農作物、観葉植物など、湿った場所で様々な有機物を餌としています。

 

そのため、工場敷地内の緑地帯、落葉や枯草の堆積、側溝の汚泥が発生源となることも多いです。
夏に工場を訪問すると、せっかく刈り取った草が放置されているのをよく見かけますが、これは昆虫にわざわざ発生するための場所を提供しているようなものです。

 

近年、クロバネキノコバエは全国各地で大発生し、一般住宅やオフィスビルの窓やガラス張りの入口に大量の死骸が堆積する、学校給食のパンに混入する、など多数の被害が出ています。

 

静岡県(熱海市)、愛知県(豊橋市、岡崎市)、岐阜県(多治見市、各務原市)、京都府(宇治市)、広島県(広島市)などで大発生の記録がありますが、表面化していないだけで実際にはもっと色々な場所で多発生していると予想されます。
ただし、なぜ最近になってこのような現象が頻発するようになったかはまだ解明されていません。

 

梅雨の時期と秋に林縁部もしくは盆地で大量発生することがわかっていますが、広大な緑地全体に発生源があるため薬剤処理による発生源対策は難しく、結局は侵入を防止することくらいしか手は打てません。

 

工場であれば、製造室の2重構造、エアシャワー室の設置、エアカーテンや防虫カーテンの設置、間仕切りや防虫ブラシによる隔離・遮断、隙間埋めなどの侵入防止対策を行います。
多層階工場の場合、1階よりも上階の方にクロバネキノコバエの侵入が多く見られることがあるかもしれませんが、この場合、屋上や屋根から天井を通っての侵入を疑う必要があります。

 

また、工場敷地内外でクロバネキノコバエの多発生が確認された場合、人や物に付着して内部に持ち込まれるケース(付着侵入)が確実に増加しますので、従業員さんはもちろんのこと、出入り業者さんにも注意喚起することが必要ですし、原料、資材、製品等の出入荷時は普段以上に気を付ける必要があります。
原料や資材など中に持ち込む物はをエアーガンで念入りに吹き、出荷する物に対してはシュリンク包装をしっかりと行い、外部や外部に近いところに長時間放置しないようにするのが望ましいです。
多発生したクロバネキノコバエは午前中は活発に動き回りますので、これらの作業を午後に行うのも効果があります。

 

もし幸運にも発生源が発見できた場合は、清掃により発生源を除去するか、それが困難な場合は発生源に対して殺虫処理を行うと良いです。

 

屋内に観葉植物があった場合、そこからクロバネキノコバエが発生することがあります。
また、食品工場等では土砂や落葉が堆積した雨どいや排水溝に堆積した汚泥や食物残滓が発生源になったことがありました。

 

クロバネキノコバエを補殺するためのライトトラップの種類ですが、工場等では確実にキャッチするために捕虫紙(粘着テープ)で捕獲するタイプのものが推奨されますが、シイタケ等のキノコ栽培ハウスではファン式のものも簡便で良いでしょう。

 

海外では、捕食性ダニのHypoaspis milesがキノコバエ類の卵や幼虫を捕食することを利用し、これらを生物農薬としてクロバネキノコバエ防除に役立てています。


クロバネキノコバエ対策


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