GDPに対応した防虫・防鼠・衛生管理
GDPとは、Good Distribution Practicesの略で、流通(輸送・保管)過程における医薬品の品質を確保することを目的とした基準(適正流通基準)などと訳されます。
2014年に日本がPIC/Sに加盟したことを受け、昨今の医薬品における品質管理はサプライチェーン全体にまで拡大しています。
つまり、医薬品メーカーのみならず物流業者(運送業者や倉庫業者など)にとっても、法的な拘束力はないもののPIC/S GDPガイドラインに定められた項目の準拠が求められるようになってきているのです。
これは、輸出だけに関する話ではなく、国内の製薬(医療用および一般用)と原薬の全てが対象となります。
(ただし、治験薬は適用してもしなくてもOKで、再生医療、医薬部外品、医療機器、化粧品は対象外となります。)
流通(輸送・保管)過程において考えられるリスクには、異物混入や交差汚染などが含まれ、それらを防止するためには医薬品を取り巻くサプライチェーンにおいても医薬品の製造環境と同等の異物混入対策や防虫・防鼠・衛生管理が求められます。
PIC/S GDPのガイドラインには、
3.2.9
施設および保管設備は清浄で、ごみやほこりがないこと。清掃計画、指示および記録を整備しなければならない。
清掃は汚染の原因を防止するよう実施しなければならない。
3.2.10
施設は、昆虫やげっ歯類その他の動物の侵入を最大限に防御できるように設計され装備しなければならない。
予防的な害虫駆除計画を整備しなければならない。適切な害虫駆除記録を保持しなければならない。
と記載されています。
GDPにおいて清掃は非常に重要な項目です。
倉庫や物流センターなどと言った流通関連施設において、日常的に清掃がしにくい場所、塵埃が堆積しやすい場所などを目視により調査し、清掃のしやすいレイアウトに変更したり、効果的な清掃方法(マニュアル、ルールなど含む)を策定する必要があります。
また、GDPでは鼠族昆虫に関しても記載されています。
流通関連施設は防虫防鼠デザインでなければならないため、必要があればハード面(施設構造)を改善しなければなりません。
ドックシェルターや高速シートシャッターの設置、場合によっては前室を設けることも必要です。
また鼠族昆虫の生息調査を行う必要もあるでしょう。
輸送や保管などの過程で原材料や製品外装(シュリンク包装やダンボール、パレット等)に昆虫類が混入することは、原材料メーカーや医薬品メーカーの信用問題に繋がる可能性があります。
それらを未然に防ぐためにも倉庫や物流センター等の屋内外で飛翔性昆虫および徘徊性昆虫の生息調査(モニタリング)を行い、生息状況(発生源や侵入経路なども含む)を的確に把握することが重要です。
そうすることで昆虫由来異物の混入リスクを予め分析し、それに基づいたベストな防虫対策を講じることが可能となります。
PIC/S GDPにおいても防虫防鼠プログラムを文書化することが定められており、各施設に応じたプログラム作成が必要となります。
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