屋外から工場や倉庫に侵入してくるアリについて

工場や倉庫でよく問題となる外部侵入アリ

工場や倉庫でよく問題となる外部侵入アリ

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工場や倉庫ではアリが問題になることがあります。
この場合、いくつかのパターンが考えられますが、大きく「工場外部からアリが侵入する」パターンと、「工場内部でアリが発生する」パターンに分けることができます。

 

今回は屋外からアリが侵入するケースについて説明します。内部で発生するアリについてはこちらをご覧下さい。
外部からアリが侵入するケースは、食品工場のようにアリにとっての餌となる食材を扱っている施設や製品等を保管している倉庫などで普通に見られます。ちなみに、倉庫の場合、医薬品や包装資材など、実に様々な製品がアリによって汚染されます。

 

食物を求めて工場や倉庫に侵入してくるアリには、トビイロケアリ、オオズアリ、アズマオオズアリ、イエヒメアリ、ヒメアリなどがいますが、トビイロケアリが最も普通だと思います。この中で、イエヒメアリやヒメアリは、建物内部の二重壁や板壁、羽目板などの間に営巣し、内部で問題となることがあります。

 

トビイロケアリなどのように特定のルートを通って製造室にアリが往来するようでしたら、そのアリの行列をたどってアリの巣を突き止め、粉剤や微粒剤を撒き、シャベルで土と撹拌しながら巣を壊します。稀に製造室内に迷入してくる程度であれば、建物の外周(10cm幅程度)に粉剤や微粒剤を帯状に散布しておくと良いでしょう。

 

建物内に食物がなくてもアリが迷入し、運が悪いと製品等に混入する場合があります。
例えば、アリは現在の巣よりも良い環境を見つけると、元々の巣を捨て、引っ越しをすることがあります。そして引っ越し先が決まらない場合に一時避難場所として、木の根元や洞、朽ち木の中、石の下などにビバーク(野営地)を形成したりもします。この引っ越し先やビバークが工場や倉庫に保管されているパレットの下や段ボール箱の中、製品の包装容器内であることがありますので、製品や資材、原料等を長期間保管する際は十分に注意する必要があります。

 

出荷後に、製品を入れている段ボール箱や木箱、製品の外装容器の中からアリが見つかったと、納入先や消費者から苦情が来ることがあります。しかし、もしそのアリが生きた状態で、個体数も多く、卵や幼虫、蛹なども一緒に見つかった場合は、発見された場所(出荷先、小売業者、消費者など)でアリが迷入した可能性が高いです。

 

女王アリは別として、基本的にアリ(職蟻)の寿命はそれほど長くはありません。特に水や食物(餌)がない状況ではすぐに死んでしまいます。例えば、トビイロケアリやトビイロシワアリでは、水や餌がない場合、1〜3日で死んでしまいます。ただし、コロニーを形成した場合は少し話が異なります。コロニー内で水や餌を補給しあうことができるからです。

 

しかし、ビバークにしろ新居にしろ、彼らにとって営巣箇所は落ち着く場所でなければなりません。製品の流通過程(移動中)というのは、人の手や機械によって大きく動かされますし、輸送中は振動もあります。環境が目まぐるしく変わりますので、アリにとっては間違いなく落ち着けません。したがって、製品中に営巣したとしても、出荷により製品が移動すると、アリは「ここは落ち着けない」と考え、製品中には留まらずに他の落ち着ける場所に移っていくという具合です。

 

それから忘れてはいけない昆虫由来異物がもう一つ。
それは羽アリです。羽アリの出現も異物混入防止の観点からは非常に大きな脅威と言えます。

 

アリの巣(コロニー)の中には、生殖能力を持った一部のアリ(雌アリ、雄アリ)がいて、それらは翅があるため有翅虫と言われています。この羽アリはある時期になると集団で結婚飛行に飛び立ちます。結婚飛行のために群飛する時期や時刻はアリの種ごとに決まっています。巣から飛び出す時刻は午前、日中、午後、夕方、夜間と、これも種によって決まっているのですが、この夕方から夜間にかけて結婚飛行を行うものが灯火に飛来し、シャッターや扉、窓などから工場内に侵入します。このとき、16メッシュほどの網戸なら簡単にくぐり抜けてしまいます。

 

工場内部に営巣している場合は、また話が別ですが、外部からの羽アリの侵入を防止するには、ライトコントロール(寄せない)と物理的遮断(入れない)により羽アリを防ぐことが重要です。


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