昆虫の食品への混入によるトラブル
昆虫が食品等から発見される事例は非常に多いです。
昆虫の食品への混入事故は、穀物や穀粉におけるトラブルは意外と少なく、麺類、パン、菓子類などの加工食品や落花生、アーモンド、クルミなどのナッツ類にトラブルが多いです。
そして、その多くはスーパーマーケットなどの小売店で購入された食品です。
穀物や穀粉にトラブルが少ないのは、加工食品とは異なり、直接口にする機会が少ないことが挙げられます。
食品は「食品衛生法」によって厳しく規制されていますが、穀物には「貯穀害虫の経済的許容量」や「米穀の品質基準」などの規格があるように、昆虫による食害や被害粒の混入は特に珍しいことではなく、ある程度であれば容認されているのが現状です。
加工食品から発見される昆虫とその食性をまとめると概ね下記のようになります。
1. 食品とは全く無関係な昆虫
2. 加工食品の原料を食害していた昆虫
3. 食品工場等で製造および加工中に食品に誘引された昆虫
4. 製品として保管されている間に紛れ込んだ昆虫
5. 包装容器に付着していた昆虫
1では、例えば食品工場から漏れる光に誘引された昆虫が、ドアやシャッター、網戸などの隙間から侵入し、製品に混入したり、工場内部の排水溝などで発生した昆虫が食品に混入したりするケースがあります。
2に関しては、作物や果実、果菜類、豆類、穀類などに付く害虫が製品に混入するケースが考えられます。
3の場合、主に臭気につられて寄ってくるパターンが多く見られます。臭いによく誘引されるのはショウジョウバエで、ビール工場、醤油工場、麺つゆ工場、缶詰工場、野菜加工場などで製品に混入する事例が多いです。また、水産加工工場では大型のハエ類が、果物の缶詰工場ではケシキスイが製品に混入することがあります。
4のように保管や貯蔵されている間に昆虫にねらわれることがあります。例えば、ノシメマダラメイガは飛翔しながらばらばらと卵を産み落としますが、菓子類やナッツ類が入っている袋の近くに産卵された場合、孵化した幼虫は容易に製品に侵入します。
5は特殊なケースですが、昆虫が容器などの包装資材を食害していたり、あるいは昆虫がたまたま包装資材に付着していたところに食品が入れられることがあります。
このように色々なケースがありますが、最もトラブルが多く注意する必要があるのは、4のケースです。
食品害虫が一般家庭や工場の貯蔵食品から発生することは珍しくありません。
食品に昆虫やクモ、ダニなどが混入するのは包装のあり方に問題があることがありますが、それ以上に、食品の長期間の保管・貯蔵をなくすとともに保管・貯蔵環境を考慮する必要があります。
給食パンへのゴキブリ混入事故のニュースです。
最後に、食品への混入が多い食品害虫を下に示します。
コウチュウ目 | タバコシバンムシ |
ジンサンシバンムシ | |
ノコギリヒラタムシ | |
コクヌストモドキ | |
ヒラタコクヌストモドキ | |
ヒメカツオブシムシ | |
ハラジロカツオブシムシ | |
チョウ目 | ノシメマダラメイガ |
スジマダラメイガ | |
スジコナマダラメイガ | |
ハエ類 | ユスリカ類 |
ノミバエ類 | |
チョウバエ類 | |
ショウジョウバエ類 | |
クロバネキノコバエ類 | |
その他 | ダニ類 |
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