工場の天井裏に潜む昆虫
食品や医薬品を製造する工場でモニタリングを行うと、その最もクリーンなエリアである充填室や包装室などで昆虫類が捕獲されることがあります。
そこでトラップが設置されていた付近を中心に発生源や生息箇所を探すのですが、それらしき箇所は全く見つからない…。
過去にこういった経験をされた方も多いのではないでしょうか。
実はこのような場合、天井裏に発生源があることがあります。
人間は自分の目に見える場所に関しては徹底的に探すのですが、視界に入らない天井裏のような場所はその存在すら忘れ、完全にスルーしてしまうようです。
でもそんな場所にこそ昆虫は生息しています。彼らは常に盲点に存在するのです。
彼らは普段、天井裏では活発に動かずにひっそりと餌を食べたりしているのですが、繁殖しすぎて密度が高くなったり、餌がなくなったり、生息環境(の温湿度等)が変化したりすると、途端に活動的になり、移動・分散しようとするため、天井の下、すなわち製造や充填、包装等の室内に落ちてきます。
無いように見えても天井には昆虫が通れるサイズの隙間が多く存在します。
具体的には、天井パネル、ダクトや空調機器、照明器具、音響機器の隙間や配線用穴などが挙げられます。
天井裏で発生した昆虫は、こういった隙間を利用して天井裏から室内へ通行するのです。
天井裏でよく見つかる昆虫は、医薬品工場ではチャタテムシが目立ち、次いでヒメマキムシ、カツオブシムシ(幼虫含む)やシバンムシ、コナダニなどです。
食品工場では、コナダニが圧倒的に多く、チャタテムシやヒメマキムシ、コクヌストモドキ、シバンムシなどがそれに続きます。
穀粉を取り扱う工場では、これらに加えホソヒラタムシやカツオブシムシ(幼虫含む)、ヒョウホンムシ、その他貯穀害虫の割合が増えます。
また、これに伴って寄生蜂やクモの割合も高くなります。
実は上に挙げられた昆虫は、製品への異物混入事故を頻繁に引き起こす問題種でもあります。
もちろん、製品への混入の全てが天井裏で発生した昆虫類によるものではないですが、そのファクターの一つであることには違いありません。
従って、異物混入対策としての防虫を推し進めるのであれば、天井裏も監視できることが望ましいです。
シールトラップによるテーピング調査などで日常的に天井裏に潜む昆虫類の動態を調査するのが理想的ですが、それができなかったとしても定期清掃時には天井裏の状況を確認すべきだと思います。
天井裏に潜む昆虫類の生息状況は床置き式粘着トラップを使用すると簡便に確認することが可能です。
万が一、天井裏で多発生が見つかった場合は、清掃が可能であれば清掃を行い、昆虫とその餌(塵埃、カビなど)を除去します。
それでも昆虫の発生が抑制できない場合は、炭酸ガス製剤などによって空間処理し、一度リセットする必要があります。
このとき、噴霧した薬剤が天井下の室内に侵入しないようしっかりと養生を行わなければなりません。
また、薬剤の室内への侵入、および壁面や床面等への残留が不安であれば、残留薬剤検査によってチェックすることも可能ですので、PCO等の専門家に相談してみましょう。
建屋内で常時大量の穀紛が舞っている食品工場の場合、天井裏で大量の貯穀害虫が発生する可能性がありますので、特に注意する必要があります。
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