意外と工場内に多い!?菌を食べる甲虫
食品や家具、家屋などにカビなどの菌類が発生するとそれを食べる昆虫が発生します。
カビを食べる昆虫ではチャタテムシが有名ですが、種類で言うと実は甲虫(食菌性甲虫類)の仲間が圧倒的に多いです。
屋内で発生する食菌性甲虫類には次のような科が挙げられます。
・ハネカクシ科
・ケシキスイ科(デオキスイ類、チビヒラタケシキスイ類など)
・ネスイムシ科(デオネスイ類、オバケデオネスイ類など)
・(チビ)ヒラタムシ科
・ホソヒラタムシ科(カドコブホソヒラタムシ、フタトゲホソヒラタムシ類など)
・キスイムシ科(トゲムネキスイ類など)
・コメツキモドキ科(ナガムクゲキスイ類など)
・カクホソカタムシ科(チビマルホソカタムシ(クラノホソカタムシ)など)
・ミジンムシ科
・テントウムシダマシ科(ツヤヒメマキムシ類など)
・マルテントウダマシ科(コマルガタテントウダマシなど)
・ヒメマキムシ科(ムナビロヒメマキムシ、クビレヒメマキムシなど)
・ホソカタムシ科
・コキノコムシ科(フタオビヒメコキノコムシ、チャイロコキノコムシなど)
・ゴミムシダマシ科(フタオビツヤゴミムシダマシなど)
・アリモドキ科(アトグロホソアリモドキ、ヨツボシホソアリモドキなど)
ハネカクシ科を除いた他の科は、分類上ヒラタムシ上科とゴミムシダマシ上科に属し、これらの上科は食菌性のものが多いです。
一般住宅や食品工場、倉庫などではヒメマキムシ科、テントウムシダマシ科のツヤヒメマキムシ属(ツヤヒメマキムシ科とする場合もある)、キスイムシ科のトゲムネキスイ属、コメツキモドキ科のナガムクゲキスイ属、マルテントウダマシ科のコマルガタテントウダマシなどが大量に発生することがありますが、特にヒメマキムシ科は発生する頻度が高く、様々な工場で問題となっています。
実際の現場では、これらの甲虫が穀粉から発生することもよくあります。
しかし、よく観察してみると彼らは穀紛を食べているのではなく、そこに生えたカビを食べていることがわかります。
清掃が行き届いていないため長年放置された穀紛は吸湿し、やがてその表面にカビが生えてきます。
製粉工場や飼料工場など穀紛を扱う工場や倉庫では、そういったカビを食べて生活している甲虫が意外とたくさんいるのです。
実は菌類と食菌性甲虫類との間には長い共進化の歴史があります。
甲虫は単に菌類を食べているだけではなく、菌類の繁殖を手助けしているということがわかってきました。
食菌性甲虫が体の一部に胞子を蓄える器官を備えているのはよく知られた事実ですし、餌として体内に入った胞子や菌糸の一部は消化されずに糞と共に排出されているとも言われています。
食菌性甲虫類はこのようにして菌を食べながら、菌の勢力拡大に一役買っているのです。
従って、各種製造工場で食菌性甲虫が多発生すると、それらが異物として製品に混入する確率が高まるだけでなく、菌による汚染のリスクも拡大すると言えます。
また、カビが生えたまま長期間放置しているといつの間にか食菌性甲虫類が大量に発生し、駆除のため生産中止せざるを得なくなる可能性もあります。
このように食菌性昆虫とカビは密接な関係があるため、カビの制御と食菌性昆虫の防除は並行して行う必要があるのです。
実際に防除を行う際は、カビを生やさないことが最良の対策となります。
結露や漏水はカビ繁茂の促進要因となりますので、当然それらを排除する必要があります。
もちろん室内の湿度もカビ繁茂に大きく影響します。
相対湿度を60%以下に保持すれば大抵のカビを抑えることが可能ですので、こうすることで食菌性甲虫の大量発生を抑制することにつながります。
製造工場内にカビが生えた木製パレットは放置されていませんか?
エアコンや冷蔵庫周辺など結露してカビが生えやすい箇所は、常にチェックしていますか?
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