昆虫の光に対する習性を逆手に取ろう

昆虫と光の関係

昆虫と光の関係

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夜にコンビニや自動販売機のガラス面にびっしりと付着した大量の昆虫。
夏にはそんな光景を見ることが多いのではないでしょうか。

 

また、今まで特に昆虫には困っていなかった工場で、近所のパチンコ店がつぶれたことにより、昆虫の飛来が多くなった例があります。これは、パチンコ店が夜遅くまで営業していてくれたおかげで近辺の昆虫がパチンコ店の灯りに誘引されていたということです。

 

このように光というのは昆虫を刺激し、且つ行動を左右する非常に大きな要因の一つと言えます。

 

今回は防虫管理における光の管理(ライトコントロール)についてのお話です。

 

食品工場などで黄色い光を放つライトを目にすることがあると思います。

 

これは防虫灯や虫除け灯、イエローランプ(黄色灯)などの名称で販売されている商品で、昆虫の飛来を低減してくれます。

 

最近は外付けフィルムタイプも数多く出回っています。

 

さて、農業分野におけるイエローランプを用いた害虫対策のメカニズムは、主に、

 

1) 黄色域の波長による昆虫の誘引が極めて少ないこと
2) 昆虫の複眼に明反応を引き起こさせる行動抑制技術

 

であると言われています。

 

農家は日夜これらを有効に活用し、農業害虫によるダメージを経済的被害許容水準(EIL;Economic Injury Level)、つまりここまでの被害であれば経済的な被害には至らないというレベル以下に保つ努力をしています。

 

現在は、こういった防虫テクニックが食品工場や飲食店においても広く応用されています。

 

例えば、イエローランプや防虫タイプのLEDはよく食品工場等の外灯や、トラックヤード、搬入出口、内部の通路などで使われています。

 

これは昆虫の飛来を完全に抑えるのではなく、飛来する個体数を低減させることを目的としています。

 

例えば、白熱灯の誘虫率を100(%)とすると、純黄色灯は約8(%)であり、蛍光灯に比べ14分の1、水銀灯に比べ32分の1に昆虫類の飛来を防止できるというデータがあります。

 

また色と光による防虫効果は、色を付ける事よりも光を遮る事の方が、効果的であると言われています。

 

このように、食品工場や飲食店において昆虫の光に対する習性を利用した防虫管理を行うということは非常に有効で、総合有害生物管理(IPM;Integrated Pest Management)の第一歩といっても過言ではありません。

 

光を利用した防虫管理を光源管理やライトコントロールと言いますが、これは物理的防除に相当し、完全にノンケミカルなので工場内のどんな場所でも実施可能です。

 

一口にライトコントロールといってもライトトラップやイエローランプだけでなく、防虫フィルム(遮光フィルム)、防虫カーテン、防虫シート、ナトリウム灯、低誘虫灯、LED(防虫タイプ)、電撃殺虫器など実に様々なツールがあります。

 

ありがたいことにライトコントロール用ツールのほとんどは飛散防止設計であるため、破損時も安心です。

 

また近年は、紫外線の強度を測る紫外線強度計や波長分布を測定する分光器、虫の目カメラなどを用いてライトコントロールの必要性を調査したり、ライトコントロール実施後の防虫効果を確認したりすることが可能です。


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