外部から工場に侵入する昆虫
各種製造工場では驚くほどたくさんの生物が侵入・生息しています。
それはダニのような微小なものから鳥類やネズミといった小動物まで実に様々です。
ここでは各種製造工場で問題となる主要な昆虫、特に外部から侵入するものについて説明します。
例えば、ユスリカやクロバネキノコバエ、タマバエのような小型ハエ類(いわゆるコバエ)、ヨコバイに代表される正の走光性が強い昆虫は工場の光に誘引されて工場内に侵入します。
これらは一般的に飛翔力が乏しいので気流に乗じて工場内に侵入します。
上記の小型ハエ類は、6〜7月頃と9月頃をピークとした二山型の季節消長を示すのも特徴です。
ただし、ヨコバイのように天敵が少なくなる8月頃をピークとする一山型の変動を示す場合もあります。
ユスリカはほとんど全ての製造工場で問題となっているため、外部侵入昆虫の代表と言っても過言ではない存在で、工場のバリア性を評価する際の指標となります
各種製造工場で発生する昆虫由来の異物混入クレームで、外部から侵入してくる昆虫の中で最も件数が多いのはこのユスリカです。
一方、ショウジョウバエ、フンコバエ(ハヤトビバエ)、ノミバエなどの小型ハエ類(これらもコバエです)やイエバエ、クロバエ、ニクバエなどの中型〜大型ハエ類は臭いに誘引されて工場内に侵入します。
これらは滅多に大量飛来することはありませんが、水産加工工場のような臭い(アミン臭)の強烈な食品を扱っている場合、大型ハエ類が無数に飛来することもあります。
工場周辺にごみ処理施設や畜産施設などがある場合も臭気の影響を受けますが、こういった工場で防虫管理を行うのは非常に難しいと思われます。
これらの中型〜大型ハエ類はエアーカーテンも効果がないほど飛翔力が強いので特に注意が必要です。
他方、化学調味料製造工場などにおいては、特殊な臭気に誘引されショウジョウバエのような小型ハエ類が多く飛来侵入することがあります。
こちらは、ドア・シャッター隙間からの断続的な侵入、もしくは搬入出時(シャッター開放時)における侵入がほとんどです。
冬季は工場から出る熱に誘引される昆虫に注意が必要です。
例えば食品工場は24時間稼動していることも多いため、冬であっても一日中暖かいです。
そのため暖を求めてイエバエなどのハエ類やその他の生物がやって来ることがあります。
地域によっては、カメムシのように建物内に侵入して集団越冬する昆虫もいます。
それから、微小な昆虫は人や物に付着して持ち込まれることがあります。
これは付着侵入と呼ばれますが、原料や資材の管理がずさんだとよく起こります。
例えば、チャタテムシやゴキブリ(卵鞘)などはパレットや資材等に付着し、そのまま工場に持ち込まれ、内部で定着することがあります。
アリの一群が引越しの最中に倉庫等に置かれた段ボールの中などで野営すし、そのまま内部に持ち込まれることがあります。
外部に製品や原材料、資材などを長時間放置しておくと様々な昆虫が付着します。
この時地面に直置きしたり、照明の真下に置きっ放しにしておくと、さらに昆虫(やその死骸)が付きやすくなります。。
このように、工場では様々な誘引源に引き付けられて実に多様な昆虫が侵入・迷入します。
したがって、外部からの昆虫の侵入経路を完全に遮断することはもちろんのこと、それとあわせて光、気流(気圧)、臭気、熱などの要因についてもコントロールすることで工場内に侵入する昆虫の個体数を格段に下げることが可能です。
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