昆虫の温湿度や二酸化炭素濃度などに対する習性
これについては一般に良く知られた蚊を例に挙げて説明したいと思います。
蚊の雌が吸血源探索のために二酸化炭素を(CO2)を感知することはよく知られています。
しかしながら、実は蚊の雌は、二酸化炭素以外に皮脂や汗、ホルモン、アミノ酸などの臭い、暖かく湿った空気などに非常に敏感に反応します。
そしてこれらの刺激を触角にある短い毛(小感覚器)で感じとると、刺激の方向へ飛び、より二酸化炭素濃度の高い方へ、より高温多湿な空気のある方へと軌道修正を繰り返し、徐々にターゲットに近づいていきます。
さすがにダイレクトに最短距離を飛ぶというようなことはありません。
このように蚊は餌(血液)を得るために臭気、二酸化炭素濃度、温度、湿度などを情報源としていますが、その他の昆虫に関してもこれらの外的要因によって支配されていることが多いです。
また、温度や湿度などは成育のためにも欠かせない条件であり、昆虫種によって差はありますが、一般的に温度が高くなればなるほど発育速度は速くなる傾向があり、最適発育温度・湿度から離れれば離れるほど発育速度は遅くなります。
そして発育零点(最低発育限界温度)を下回ると発育できません。
この発育零点も昆虫種によって異なります。
さらに温度は、羽化率、成育日数(寿命)、産卵数などにも影響しています。
したがって温度や湿度をコントロールすることで防ぐことができる昆虫も非常に多いと言えます。
例えば、カビを餌とする昆虫群(食菌性昆虫)はカビにとっての好適条件が自身の最適発育条件となっていることが多いため、これらの昆虫を制御するためには、室内をカビが生育できない温湿度に保つのが有効です。
工場全域における温湿度管理は簡単なことではありませんが、重要管理エリア(清潔作業区)だけでも実施してみてはいかがでしょうか。
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