防虫ネットで虫がどれだけ防げるか?
工場などで防虫管理を行う際の基本的な対策の一つに、外部からの飛翔性昆虫の侵入防止というものがあります。
これは窓やドア、シャッターの隙間などあらゆる侵入口や経路を遮断することで確実に昆虫類の侵入を阻止しようという考え方です。
隙間を塞ぐためには、防虫ブラシ、ゴムパッキン、パテ、発泡ウレタン、コーキング剤、アルミテープなど実に様々なものが利用されます。
窓やドアなどのフレームや天井、壁などに生じた隙間はこういったツールが役に立ちますが、工場によっては窓を大開放している場合があります。
そのような工場で防虫管理をしようとは不届き千万なのですが、暑さ対策などのどうにもならない諸事情もあるので仕方がありません。
ではどうしているのかと言うと、防虫ネット(防虫網)、つまり網戸を設置しているのです。
実際の工場では、防虫効果を期待して外部と接する窓や吸排気口などに16メッシュ程度のネットが設置されていることが多いです。
16メッシュというと一般住宅に設置されている家庭用の網戸とほぼ同じメッシュ数です。
メッシュ数が大きくなるほど、網の目は細かくなります。
では実際に窓に防虫ネットを取り付けるとどれだけの昆虫が防げるのでしょうか?
防虫ネットがある場合とない場合で昆虫の侵入阻止率がどう変わるか調べた研究があります。
それによると、
16メッシュで76%、
30メッシュで94.8%、
40メッシュで99.1%、
の外部侵入型昆虫の個体数の減少がみられたとのことです。
この結果は、防虫ネットが飛翔性昆虫の侵入防止に有効であることを裏付けています。
また、メッシュ数が多くなるにつれて昆虫の侵入率は低くなることもわかりました。
しかし、40メッシュでも微小な昆虫(例えば、アザミウマや寄生蜂など)は侵入可能であるため、使用するエリアの防虫レベル(その場所の重要度による昆虫侵入数の許容範囲)に応じた防虫ネットを設置する必要があります。
また、メッシュ数が多くなるということは、それだけ網目が細かくなるということですので、目詰まりもしやすくなります。
暑さ対策のために窓を開けざるを得ないエリアに防虫ネットを設置する際は、その辺りも検討する必要があります。
近年、吸排気口のフードや空調機の吹き出し口などからも飛翔性昆虫が侵入していることがわかってきました。
それを防ぐために、そのような箇所に防虫ネットを設置する技術も上がってきています。
エアコンやスポットクーラーの吹き出し、換気扇のフードなどにも防虫ネットを設置すると実際に多数の飛翔性昆虫が捕獲され驚愕することになるでしょう。
天井や壁、ドアなどの隙間という隙間を塞いだのに、まだ飛翔性昆虫が減らないという場合、こういった場所が侵入経路になっているかも知れません。
最近の防虫ネットは薬剤含浸タイプもあり、アイデア次第で様々な場所に活用可能です。
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