防虫管理の流れを把握しよう!

防虫管理はどのような流れで進めるべきか?

防虫管理はどのような流れで進めるべきか?

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一昔前、日本の害虫駆除業者(以下、PCOとする)と言えば一般家庭におけるシロアリやゴキブリ、ネズミの防除が主な業務内容であり、売り上げ内容の中でもそれらが非常に大きなウェイトを占めていました。

 

しかし現在、その傾向は徐々に変化し、食品工場や包材工場、医薬品工場、精密機器工場など様々な「製造工場」や「商業施設」での防虫管理や衛生管理がメイン業務になりつつあります。

 

ちなみに「製造工場」の中には各種製造工場だけでなく病院などの医療施設や博物館、美術館等も含みます。
また「商業施設」にはオフィスビルやホテル、デパート、大型スーパー、一般飲食店等を含みます。
中には、一般家庭の防虫業務は売り上げの1割にも満たず、「製造工場」と「商業施設」の防虫管理を専門に行い、それだけで9割以上を占めているようなPCO企業もあります。

 

そして、これらのほとんどが総合的有害生物管理(IPM;Integrated Pest Management)により防虫管理を行っています。
消費者が製品の安全・安心に対して疑心暗鬼になっている今日、日本のPCO業界では当分このような傾向が続くと思われます。

 

では「製造工場」や「商業施設」ではIPMを用いて一体どのような防虫管理を行っているのでしょう。

 

 

異物混入防止,防虫管理,流れ,フロー事前調査と年間防虫管理プログラム

 

新規に防虫管理を実施する際にまずやるべきことは、その工場で現在抱えている問題の把握です。
そこで、一番初めに事前調査というものを行う必要があります。事前調査は工場診断とも呼ばれます。

 

事前調査では目視調査昆虫相調査と呼ばれる手法を用います。

 

目視調査は、目視により工場内外を隈なく調査し、問題となっている生物や場所、今後問題となりそうな場所をピックアップすることです。

 

一方、昆虫相調査は、様々なトラップを用いて工場全体または特定エリアの調査を行い、昆虫の分布状態を把握し、さらに継続的にモニタリングするエリアを決定することです。

 

食品工場の防虫担当者や製造現場の従業員からのヒアリング結果も参考にします。

 

そしてこれらの結果を基にして、その食品工場にとって最適な年間防虫管理プログラムを立案します。

 

 

異物混入防止,防虫管理,流れ,フロー防虫モニタリング

 

年間防虫管理プログラムが決定すると、食品工場内における昆虫の動態を監視しなくてはなりません。
目視調査や昆虫相調査によって決定された管理エリアにトラップを設置し、防虫モニタリングと呼ばれる定点観測を行います。

 

防虫モニタリングの頻度は月1回に設定している工場が多いです。
設置1か月後に回収したトラップから昆虫種の同定や個体数の記録を行い、毎回報告書を作成します。

 

報告書は食品工場側で適切に保管する必要があります。

 

防虫モニタリングの方法には特に決まった形はありません。
例えばトラップの設置期間も1週間、2週間、1か月など様々です。現場のニーズに合わせた方法をカスタマイズすることが可能です。

 

 

異物混入防止,防虫管理,流れ,フロー防虫モニタリング結果の分析

 

次に防虫モニタリングや目視調査(点検やインスペクションとも呼びます)を行った結果を基に、様々な角度から分析を行います。
そして昆虫捕獲数の急増など異常が認められた場合は、直ちに対策を講じます。

 

防除方法は化学的防除だけでなく、物理的防除、サニテーションなど様々な手段を組み合わせて、対象害虫の種類やステージに応じた防除施工を実施します。
施工した内容は記録し、報告書として提出します。

 

何か対策を行った際は、報告書を作成するなどし、とにかく必ず記録するようにします。
またその記録は常に情報管理し、今後の防虫対策に役立てます。

 

よく何年分の報告書を残しておけば良いかという質問がありますが、最低でも5年分は保管しておくのが望ましいです。

 

それから、(これはよくPDCAサイクルに例えられますが)各メニューを定期的に回しながら、絶えず検証を行います。
そうすることで、プランの軌道を修正しつつ、その現場の防虫管理レベルを継続的に底上げしていきます。この報告書作成(文書化)、管理、検証という一連の流れを特別にバリデーションと呼ぶ場合もあります。

 

 

異物混入防止,防虫管理,流れ,フロー防虫ミーティング

 

毎月防虫モニタリングの結果が出ると、防虫ミーティング(この呼び名は特に決まっておらず様々)を行います。
この防虫ミーティングを単にモニタリング報告会と呼んだり、医薬品工場では防虫対策会議、防虫委員会、防虫協議会などという名称で呼んだりします。

 

そして報告書を基に協議を行い、社員教育や今後の対策内容を検討することをIPMではディスカッションと呼びます。

 

月々の防虫ミーティングももちろん大事ですが、半期に1度や年度末には普段より大規模な防虫ミーティングを行い、IPMを用いた防虫管理の実施事項、その効果判定、今後(来期)の方策などについて話し合います。
すなわち、良かった対策は継続、もしくは強化、芳しくなかった対策は是正、しつつ来期の年間防虫管理プログラムを決定します。

 

そしてこのサイクルを毎年回しながら、防虫レベルをスパイラル的にアップさせていくのが望ましいです。


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