防虫管理では光と色のどちらが重要?

光と色による害虫管理

光と色による害虫管理

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大抵の昆虫(特に飛翔性昆虫)は光に集まる習性を持ちますが、これを正の走光性趨光性;photodromy)と言います。
もちろん負の走光性を持つ昆虫もおり、これは幼虫に多いです。

 

昆虫の可視波長域は、およそ300〜600nm(ナノメートル)で、人間の400〜700nmよりも短波長側に100nm程ずれています。
そして、波長が400nm以下の光(紫外線)を特に好み、種によって若干異なりますが大抵の昆虫が、300〜400nm付近の波長によく反応します。

 

例えば、この反応のピークは、ニカメイガで355nm、ショウジョウバエ類で380nm、ヒメトビウンカで365nm、カメムシ類で300〜400nmという具合です。

 

一般に昆虫は人間でいう赤い光はほとんど感知できず、感度の高い短波長の光には良く誘引されますが、黄色光など波長の長い光には誘引される数が少なくなります。

 

昆虫のこのような習性を利用したものとしてブラックライト(誘虫ランプ)を利用した電撃殺虫器ライトトラップなどがありますが、これらの光源は365nmにピークを持ち、昆虫の光に対する反応曲線と類似した波長分布を持つように設計されています。

 

ブラックライトの誘引率は電球(白熱灯)に比べ約13倍もあります。

 

黄色い光を出す蛍光灯は、防虫灯・虫よけ灯・黄色灯・イエローランプなどの名称で販売されています。
ただし、これは昆虫の飛来抑制効果がある程度期待できるのであって、昆虫の飛来を完全に抑えれるわけではありません。

 

例えば、(よく引用されるデータですが)白熱灯の誘虫率を100(%)とすると、純黄色ランプは約8(%)であり、蛍光灯に比べ1 / 14、水銀灯に比べ1 / 32に昆虫の飛来を防止できるというデータがあります。

 

他方、農業分野でも黄色灯を用いた防虫技術が発達しています。

 

農業分野における黄色灯を用いた害虫対策のメカニズムは、黄色域の波長による昆虫の誘引が極めて少ないことと、昆虫の複眼に明反応を引き起こさせる行動抑制技術だと言えます。

 

では色に関してはどうなのでしょうか。

 

野外における昆虫相調査ではパントラップ(水盤トラップ)がよく用いられ、このパントラップの中ではイエローパントラップ(黄色水盤トラップ)が最もよく捕獲できると言われています。

 

このように昆虫によっては好みの色を持つ種もいるようですが、色による誘引や忌避の効果については、実はまだよくわかっていません。

 

これがもし解明されたら多くの飛翔性昆虫を忌避する色で工場の外壁を塗装するなど、様々なシーンでの活用されそうです。

 

しかし、いずれにせよ昆虫は波長によって定位行動を示しますので、色と光による防虫管理は色を着ける事よりも光を遮る事の方が、効果的であると言えます。
つまり、工場で飛翔性昆虫の個体数を抑制するためにはやはり光源管理(ライトコントロール)が重要ということになります。


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