カメムシ
カメムシは半翅目(カメムシ目)異翅亜目(カメムシ亜目)に属する昆虫の総称です。
日本では約600種が知られており、昆虫の中では大きいグループになります。
形態は多様ですが、口器は穿刺吸収型で、下唇が変化して口吻となっています。
カメムシの前翅は、基半部が革質化した半鞘翅となっています。
カメムシは、陸生カメムシ群、主として水面上で生活する両生カメムシ群(アメンボやミズギワカメムシなど)、水生カメムシ群(タガメやタイコウチなど)の3群に大別されます。
陸生カメムシ群は植食性または捕食性で、植物の液汁を吸う植食性のものには多くの農業害虫が含まれます。
これらは、農作物に対して直接的、あるいは間接的(農作物の病気を媒介)に害を与えます。
また、冬になるとクサギカメムシやスコットカメムシ、マルカメムシなどが越冬のために集団で建物内に入ってくることがあり、稀に工場や倉庫、ホテル、一般住宅などで問題となります。
これらが大量侵入すると、単に不快なだけではなく、臭いが強烈ですので、その悪臭に悩まさせることにもなります。
他にもマダラナガカメムシ、ベニモンツノカメムシ、ヨツモンカメムシが冬場に家屋侵入しますが、臭いはそれほど強くありません。
夏場はミナミマルツチカメムシなどが灯火をめがけて多数飛来するため、その悪臭と不快感が問題となることがあります。
その一方で、捕食性のカメムシも少なくなく、動物(主に他の昆虫)を捕らえて体液を吸います。
これらの中には、害虫にとっての天敵(益虫)として評価されているものもかなりいます。
例えば、ハナカメムシの仲間です。
ハナカメムシはゴマ粒ほどの大きさで、サイズは非常に小さいのですが、甲虫や蛾などの卵や幼虫を広く捕食し、穀物の害虫抑制に有効です。
ただ、これらの中には人を咬み、皮膚炎を起こさせる種がいるので注意が必要です。
また、穀物やその粉を扱っている工場や貯蔵庫では貯穀害虫が発生することが多いのですが、それに伴ってハナカメムシが発生することがあります。
貯穀害虫の卵や幼虫を食べてくれるので、貯穀害虫の個体群密度は減るのですが、ハナカメムシの個体数が増えてしまうと別の問題が発生します。
異物混入問題です。
ハナカメムシ自体が製品に混入してしまう恐れがあるのです。
せっかく貯穀害虫の数が減少してもこれではあまり意味がありません。
農業害虫対策では汎用されている天敵を利用した生物農薬が使用できない点が、異物混入対策の厄介なところです。
貯穀害虫を捕食するハナカメムシには、短翅型と長翅型があることがあり、長翅型はよく飛びます。
また、これらはライトトラップでも多数捕獲されることがありますので、正の走光性を持っている可能性が高いとされています。
近年は、穀物等の原料や各種資材の移動に伴って海外から侵入してくるハナカメムシが多いようで、食品工場等でモニタリングをしていると突然ハナカメムシが大量に捕獲されることがあります。
最近ではクロセスジハナカメムシなどが関東地方を中心によく見つかっているようです。
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