用途に応じた殺虫剤の選定
食品や医薬品、包装資材等の製造工場では、農業害虫対策や感染症防圧のための衛生害虫対策の場合とは異なり、防除対象となる昆虫種を特定の種に絞ることはできません。
そのため、異物として製品に混入する可能性がある全ての昆虫類が防除の対象となります。
まず、汚染作業区域(汚染区、汚染エリアなど)ですが、この区域は戦国時代のお城で例えるならば、外郭(外堀や石垣など)のような存在で、このエリアの防虫対策をいかに効果的に行うかによって結果は劇的に違ってきます。
汚染エリアでは、外部侵入および内部発生の飛翔性昆虫および徘徊性昆虫に対し、非選択的に作用する基本殺虫剤の選定が必要となります。
飛翔性昆虫対象の空間処理用として、低毒性で非選択性、且つ残留性のほとんどないピレスロイド系の炭酸ガス製剤などがよく用いられます。
排水系統から発生する昆虫に対する殺虫剤としては、水性乳剤やIGRの使用が多いです。
徘徊性昆虫に対する殺虫剤としては、局所に対してベイト剤やMC剤が施用されます。
次は準清潔作業区域(準清潔区、重要管理エリアなど)ですが、この区域では汚染エリアですでに殺虫剤使用による密度低下を実行しているため、基本的には物理的防除(捕殺用トラップや清掃などの組み合わせ)により防虫管理することが望ましいエリアと考えられます。
この区域は、お城で例えるならば曲輪・廓(くるわ)のような存在で、外郭で食い止められなかった昆虫類を確実に仕留めるという意味で、非常に重要な管理エリアとなります。
この準清潔エリアでは、突発的な事故等で管理基準値を大きく逸脱したような場合、原因を調査するとともに状況に適した殺虫剤を使用し、昆虫の密度低下をはかり、管理基準をクリアーするよう努めます。
通常の管理では殺虫剤を使用しないエリアであり、やむなく使用する場合は残留性のない殺虫剤を用いなければなりません。
基本的には汚染エリアで選定した範囲から選定します。
またバリデーションの一環として、時には殺虫剤使用後の効果判定(昆虫類の捕獲個体数の変動調査)や残留殺虫剤のチェックも必要となります。
最後に清潔作業区域(清潔区、最重要管理エリアなど)ですが、ここは言うまでもなく本丸的存在に当たり、防御の中心となります。
ゾーニングによる防虫管理を実施している場合、このエリアは床置き式粘着トラップときめ細かな清掃で管理するのが基本となります。
飛翔性昆虫は光源、とりわけ紫外線の短波長に対する定位行動が強いため、エリア内のライトトラップの設置も諸刃の剣となる可能性を考慮する必要があります。
ただし、エリアの前の段階ではライトトラップの設置が可能です。
また、化学的防除に関しては、準清潔エリアの場合とほぼ同様なのですが、殺虫剤の飛散や混入などの危険性も鑑みて基本的には使用しないというスタンスで管理に当たるべきです。
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