木製パレットは百害あって一利なし!?
食品や包装資材、医薬品などを製造する工場を訪問すると、敷地内に木製パレット(木パレ)が山積みになっているのを目にすることがあります。
それも無造作に地面に直置きされて…。
古い工場だけでなく、新設された工場や倉庫でもそういうことがあるのは驚きです。
木パレの材質や置かれた環境、放置期間などの条件次第では、様々な木材害虫、例えば乾材を加害するナガシンクイムシ類やヒラタキクイムシ類、シバンムシ類などの乾材害虫が付く可能性がありますし、下手をするとシロアリに食害されることも考えられます。
シロアリは、はじめは木パレを餌としていたとしても木パレがスカスカになり餌として価値がなくなれば、当然今度はその付近にある餌、つまり工場建屋や倉庫などを食害し始めますので、とにかく工場敷地内にシロアリを寄せる餌は放置しておかないことが賢明です。
シロアリは建屋そのものにダメージを与えるだけでなく、羽アリによる異物混入事故を引き起こす可能性を秘めています。
ちなみに羽アリの発生時期は、ヤマトシロアリは4〜6月頃、イエシロアリは6〜7月頃です。
木パレは樹脂製パレット(プラスチックパレット、プラパレ、樹脂パレ)よりも虫が付きやすいと言われています。
その理由は、単に木の方が自然に近いため、昆虫にとって馴染みがあり潜み場所として適しているというだけでなく、木パレの方がカビが生えやすいためなのです。
昆虫の中にはカビを食べるものが多く存在します。
中でも、特に有名なのはチャタテムシ類やヒメマキムシ類です。
「カビと言えばチャタテムシとヒメマキムシ」と覚えておいてください。
他にもホソヒラタムシ類、コキノコムシ類、キスイムシ類などが木製パレットに付着していることがあるのですが、この場合も木パレに生えたカビが原因と言えるでしょう。
これらの昆虫は微小で、それらがパレットの裏面にびっしりと隙間なく付いていることがあるのですが、それに気付かずに工場や倉庫の中に搬入してしまったとしたらどうなるでしょうか。
そして、こういった大量の食菌性昆虫が何かの拍子にパレットから移動してしまい、原料や資材、中間品、製品などに混入してしまったら目も当てられません。
けれども、残念ながらこういう事故は度々発生していますので、十分に気を付ける必要があります。
木パレはプラパレよりも重く扱いづらいため、どうしても乱雑に扱われる傾向にあります。
そうすると割れたり削れたりし、木片や木くずなどが出ることになります。
こうなると当然、製品にとっての異物となる危険性があります。
また、非常にまれですが、老朽化して腐敗が進むと釘が抜け落ちることもあるようです。
その点プラパレはメンテナンスフリーですし、洗浄性にも優れているので衛生的です。
木材梱包材(木パレ、木箱、木枠など)を使用して海外に貨物を輸出する際は、病害虫の付着を予防するため木材梱包材に対して燻蒸処理したことを表示することが要求されていますので、木パレを使用する場合は手間がかかります。
実際に海外に進出している日系食品メーカーの工場や倉庫では定期的に木パレを燻蒸しており、コストと手間がかかると聞きます。
このように木パレには様々なデメリットがあります。
コストの問題もあると思いますが、まだ木パレをメインで使用している工場は、重大な事故につながらないうちにプラパレに変更していくのが良いのではないでしょうか。
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