製造環境の指標となる昆虫類
指標生物とは、様々な環境の条件や汚染レベルを調べる際に用いる、ある特定の条件に敏感な生物のことを指します。
植物や微生物などもこれに含まれますが、河川の汚染具合を調べる際の水生生物(主に昆虫)の例が特に有名です。
この指標生物を用いた環境調査は誰でも簡単に行うことができるので、最近では校内行事の一環として小学生が行っていたりします。
確かにこの手法では、温湿度、化学成分の組成や濃度、照度などの様々な条件を用いた一般的な自然環境調査あるいは環境汚染調査と比べると、
1)厳密さを欠く
2)期待する条件以外の条件が影響を与える場合もある
3)特に普遍的でない条件による影響がある場合誤った判断が出やすい
4)季節などに影響を受ける
などのデメリットがありますが、上述のような数値測定よりも手軽で簡単であるという非常に大きなメリットがあります。
実は食品等の製造工場内でよく捕獲される昆虫類からもある程度その環境汚染具合を知ることができます。
まずは飛翔によって外部から建物内に侵入してくるユスリカ、アブラムシ(有翅虫)、アザミウマなど、小さくてそれほど飛翔力がない昆虫です。
これらは「建物のバリア性」の指標となります。特にユスリカは正の走光性が非常に顕著であるため、建物の物理的なバリア性以外に光源管理(ライトコントロール)に関しても指標となります。
いっぽう、アブラムシやアザミウマはその体サイズが微小であることから建物の間隙度の指標としても有効です。
外部から徘徊によって侵入してくるタカラダニですが、これも建物のバリア性の指標になります。
特に建物の外部との間隙度と非常に相関があります。
外部から侵入もしますが、内部での発生が考えられる昆虫群にチョウバエ、ノミバエがあります。
チョウバエは「排水系統の清掃」、ノミバエは「汚泥、残渣、動物死骸の堆積」の指標となります。
モニタリング結果が通常よりもはるかに多いチョウバエの捕獲があった場合、工場内における排水系統に対する清掃状況を再確認する必要があります。
トビムシやシミは内部でも発生しますが、荷物等に付着して侵入する(持ち込まれる)こともあります。
トビムシは「清掃状態、土の持ち込み」等の、シミは「多湿、紙片などの堆積」の指標になります。
トビムシは突然異常発生することがありますが、工場内部の清掃頻度が低下していることが原因だったということも少なからずあります。
クモは外部から徘徊侵入および付着侵入するだけでなく、内部で発生することも可能です。
クモは「昆虫類の個体数」の指標となります。
工場内で餌となる昆虫の個体数が増えてくるとクモの個体数も増えるということです。
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