薬剤の保管と処理の仕方
近年は、有害生物管理のDIY化が進み、それに伴って個人でもホームセンターや通販などで簡単に殺虫剤や殺鼠剤などの薬剤が手に入るようになりました。また、コストを削減するために外注していた殺虫等の作業を自社で行う製造業者も増えてきました。
確かに薬剤は容量用法さえ守れば、特に難しいことはなく誰にでも簡単に扱えます。
しかし、管理方法についてはあまり気にせずに薬剤を使用している場合が多いようです。
今まではそれで良かったかもしれませんが、知識がないばかりに思わぬ事故につながることがありますので、そういった事故を未然に防ぐためにも薬剤の管理方法、特に保管や処理の仕方については熟知しておかなければなりません。
殺虫剤には、有機リン系やピレスロイド系、カーバメート系、昆虫成長制御剤、ネオニコチノイド系など、実に様々なものがあります。
殺虫剤や殺鼠剤を取り扱う場合は、使用する薬剤の特性をよく知り、中毒の予防を第一に考えた上で、使用時や使用後(保管や処理等)の取り扱いに関して常に万全を期するよう努めなくてはなりません。
多量の殺虫剤や殺鼠剤を取り扱う際は、それらの管理全般を行う者が毒物劇物取扱責任者の資格を、薬剤庫の管理を行う者が危険物取扱主任者の資格を有し、常時注意を払うことが理想的です。
薬剤およびその施工時に用いるハンドスプレイヤーや動力噴霧器等の機材は、施錠ができる構造の薬剤庫と機材庫にそれぞれ格納しなければなりません。
薬剤に含まれている溶剤には引火性危険物も多いため、薬剤庫は床、壁、天井がコンクリートかモルタル構造であることが求められます。薬剤庫のサイズによって貯蔵できる薬剤量が定められていますので確認する必要があります。なお、貯蔵量によっては防爆設備を施したり、保安距離を設けることも必要です。
量や剤型にかかわらず薬剤の保管には次の条件を満たす場所を選ぶか、そのような構造の中で保管する必要があります。
1. 直射日光が当たらなくて、比較的温度が低く、温度差が安定している場所
2. 痛風が良く、湿度が高くならないような構造を持つ場所
3. 施錠ができる構造を持つ場所
4. 人間、特に子供や老人、ペットなどに接触する恐れのない場所
5. 保安距離の取れる場所
また、保管場所を監視する際の注意事項は下記の通りです。
1. 火災予防上、安全かどうか
2. 薬剤庫の近辺に火気はないか
3. 保管中の容器から薬剤が漏れたり、溢れたり、飛散していないか
4. 保管物の残液・残物処理は適切か
5. 薬剤庫内の温度は40℃に達することはないか
薬剤および薬剤容器を処理する際、使用後の薬剤容器内の残液や残物は多量の水で洗浄します。可燃性の容器は安全な場所で少量ずつ燃焼させるのが良いでしょう。
空き缶類は、他の缶類と区別して処分しますが、その際缶の底に穴を開けることが望ましいです。特にエアゾール剤などは、空になってもガスが内部に残留する場合がありますので、バルブの凹部に釘などで穴を開け、ガスを抜いておくと安全です。
土中に埋めるのは土壌や地下水等の環境汚染を招く恐れがありますので、極力避けるのが良いでしょう。
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