昆虫の生態を知って防除に役立てよう!

チャタテムシ

チャタテムシ

異物混入,防虫管理,内部発生昆虫,生態,防除

 

チャタテムシという虫をご存知ですか?

 

長年開いていなかった古い書籍などを開くと、ダニのようなフケのような微小な何かが動いているのを見たことがある人も多いと思います。
また、古くなったお米などに細かいホコリのような何かがうじゃうじゃと湧いていたなんて経験がある人もいるのではないでしょうか。

 

このフケのような微小なものの正体がチャタテムシなのです。

 

チャタテムシは体長1〜1.3mmの非常に小さな虫です。こんなに小さくても一応昆虫なのです。
この虫は色が薄い(透明に近い褐色)ので、床面にいるのを立ったまま肉眼で見つけるのは非常に困難です。

 

でも目を近づけると見えます。
つまり、この虫が異物として製品に混入したとしても眼の良い(安全意識の高い)消費者は見つけてしまうのです。

 

実際にチャタテムシが製品に混入したという事故例は多いです。
食品、包装資材(フィルムや紙など)、医薬品など、様々な製品から見つかっています。

 

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チャタテムシは細かくて、その存在に気付きにくいため、気付いた時には時すでに遅し、大発生して物凄い数になっていることがあります。
こうなったら生産を一時中断して、殺虫剤による駆除(空間噴霧など)を行ったり、倉庫内でチャタテムシによって汚染された全ての製品や原料などを廃棄したりする必要に迫られるかもしれません。

 

チャタテムシは、製造現場の中で最も清浄度の高いクリーンルームの中でも生息可能で、あらゆる防虫対策を講じても最後までしつこく残っていると言われているくらい防除するのが難しい厄介な昆虫なのです。

 

1匹1匹は小さくて軟らかく、指で少し触れただけでもすぐに死んでしまうようなこの弱い虫が、食品や医薬品、包装資材等の製造業界を最も悩ませているのです。
最弱の昆虫が、最も手強い、つまり最強なのです。

 

チャタテムシを最強と言わしめる理由は、その圧倒的な繁殖力にあります。
温湿度や餌などの条件が揃うと、爆発的に増えることが可能なのです。
特にヒラタチャタテという種は、単為生殖ですのでメスのみでどんどん増えます。

 

そして、上でも少し触れましたが、あまりにも微小なため、その存在になかなか気付かないのです。
段ボールやパレットなどに付着していても気付かないので、そういった物に付着したまま他の場所に移動し、新天地でも当然増えます。
チャタテムシの発生は局所的に見られることが多いのはこのような理由のためです。

 

チャタテムシは貯蔵食品や乾燥した動植物、塵埃の中に含まれる微細な有機物、昆虫死骸の小片などを食べますが、特にカビ(真菌)や酵母などの微生物が大好きです。
「チャタテムシ=(イコール)カビ」と覚えてください。

 

チャタテムシ以外にもう一種カビ好きで有名な昆虫がいまして、ヒメマキムシと言います。こちらもついでに覚えておきましょう。

 

実は、チャタテムシにとって好適な温湿度は、カビの好適温湿度とほぼ同じ、つまりチャタテムシとカビの発生には相関があるのです。
カビが生えればそれを餌とするチャタテムシが増え、チャタテムシが増えると(チャタテムシがカビの胞子や菌糸を体に付けて移動しますので)カビの生えている面積が広がったりします。でも、カビを抑制することができれば、チャタテムシの数も減少します。
ちなみに、カビにとって好適な条件下では、チャタテムシがカビを食べつくすということはありません。チャタテムシの繁殖力よりもカビの増殖力の方がはるかに優っているからです。

 

チャタテムシには有翅型と無翅型があります。

 

野外性のチャタテムシはほとんどが有翅型なのですが、屋内性の有翅型チャタテムシで代表的なのはヒメチャタテやコチャタテの仲間です。
無翅型チャタテムシの代表格は、コナチャタテの仲間、特に上でも出てきたヒラタチャタテが多いです。

 

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有翅型チャタテムシは水を大量に使う食品工場などで特に多く見られますので、無翅型チャタテムシ以上にウェットな環境を好むのかもしれません。
あくまでもイメージですが有翅型チャタテムシの方がカビを好み、無翅型チャタテムシは塵埃中の有機物を好むような気がします。

 

そして、無翅型チャタテムシは倉庫や天井裏、部屋や押入の隅、ダンボール箱等の物陰など、光のほとんど当たらない暗い場所に集まる習性があります。
生息密度が高くなると床置き粘着トラップでも多数捕獲されるようになりますが、密度が低いうちはトラップの下に潜んだりして、なかなか捕獲されないこともあります。

 

床置きタイプには、クリーンルーム内に設置するために滅菌処理された粘着トラップもあります。

 

これに対し、有翅型チャタテムシは光によく誘引され、ライトトラップでも大量に捕獲されることがあります。また、食品工場の製造エリアなどで冷蔵庫など結露の多い壁面にびっしりと有翅型チャタテムシが静止しているのを目にすることもあります。

 

いずれにせよ、これらの発生を早期に知るためには、ライトトラップや床置き粘着トラップを配置し、日頃から監視しておくことが大事です。

 

チャタテムシの防除は、餌の除去が基本となります。
工場等でチャタテムシの餌となるのは、フケや昆虫破片など塵埃中に含まれる有機物やカビでしたね。

 

塵埃は清掃によって徹底的に取り除いてください。
クリーンルームであればクリーンルーム用の掃除機や粘着ローラー、不織布などで除塵してください。

 

カビがすでに生えてしまっている場合は、殺カビ剤等を処理した後、防カビ剤を処理します。
カビは結露しやすい場所や多湿で栄養豊富な場所(木部や食品残渣など)から発生しますので、栄養源を除去し、換気を良くすることで抑えることが可能です。また、カビが生えないよう部屋全体の空調管理が徹底できれば良いですが、それが難しい場合は除湿機を設置するなどして、カビが生えやすい場所の湿度を下げてやるだけでも効果があります。

 

倉庫等で殺虫剤が使用できるところでチャタテムシの多発生が見つかった場合は、発生源の周辺や壁際、コーナー部などに殺虫剤を残留処理しておきます。殺虫剤が直接散布できない場合は、炭酸ガス製剤を空間全体に噴霧し、密閉した状態で暴露しておくと良いでしょう。

 

チャタテムシの付着侵入を防ぐためには、外部から持ち込む前にパレットや段ボールなどにエアーを吹き付け、付着している虫を吹き飛ばすと良いです。
手間のかかる作業ですが、面倒臭がらずにやっておくことで、昆虫の持ち込み(付着侵入)を随分と防ぐことができます。

 

工場や倉庫内でのチャタテムシの分散を防ぐためには、隙間埋めが効果的です。
チャタテムシは、餌が十分ある間は良いのですが、繁殖して密度が高くなってくると、他のより好適な場所に移動分散するという習性があります。
普段はそれほどアクティブではないのですが、このときの機動力は結構高く、思わぬところまで移動してしまうことがあります。

 

それを防ぐためにコーキングやシールテープなどの隙間埋めツールが役に立つのです。
コンクリートや石膏ボードの割れ目、壁の立ち上がり、壁と巾木の隙間など、隙間という隙間を全て塞いでください。
チャタテムシは平べったい虫なので1mmほどの隙間であれば余裕で通過できます。

 

発生源や侵入経路がわからない場合は、シールテープによるシールトラップが重宝します。
あらゆる隙間にシールテープによりトラップを仕掛けておくと、どこから来ているかがわかるという寸法です。
クリーンルームなどでシールトラップを実施する場合は天井にも気を配ってください。

 

どれだけクリーンな工場でも天井裏では昆虫が発生していることが多く、そういった昆虫は照明設備やスピーカーなどの隙間を通ってクリーンルーム内に落ちてくる場合が多いのです。
あとはダクト内で発生した昆虫がエアコン等の吹き出し口を通って室内に入ってくるパターンもあります。

 

こういったところにシールトラップを設置しておくと後日、チャタテムシが捕獲されることがあり、発生源や侵入経路の特定につながります。
クリーンルーム内でいつもチャタテムシが見つかるけど、どこから来ているのかさっぱりわからないという場合は、一度試してみてはいかがでしょうか。

 

 


コナチャタテ科のチャタテムシです。


チャタテムシ対策


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