昆虫の生態を知って防除に役立てよう!

シバンムシ

シバンムシ

異物混入,防虫管理,内部発生昆虫,生態,防除

 

ぷ〜んと緩やかに飛ぶ茶色いゴマ粒のような虫を見たことはないですか?
飛ぶのが速いわけではないので、手でぱっと掴んだことがある方も多いと思います。
この虫がシバンムシです。

 

シバンムシは、コウチュウ目シバンムシ科に属する甲虫で、死番虫と書きます。

 

成虫は大抵の場合、円筒形で、頭部は下を向いているため背面からは見えません。
サイズは種によってまちまちですが、日本産のものはそれほど大きくはなく、小さなものだと1.5mm程、大きなものでも10mmもない位です。

 

シバンムシ科の幼虫は、乾燥植物質を食べて生活しています。
特に、木材に穴を開ける傾向が高い種は、woodwormやwood borerと呼ばれています。そのうちのいくつかの種は、木製の家具や建材、住宅の構造などにダメージを与える大害虫となっています(木材害虫)。

 

日本では、乾燥食品を食害するもの(食品害虫)や書籍を食害するもの(書籍害虫)が問題となっています。

 

食品害虫として世界的に著名なのは、タバコシバンムシ(Lasioderma serricorne)とジンサンシバンムシ(Stegobium paniceum)です。

 

これら2種のシバンムシは形態的にもよく似ていて、成虫はどちらも茶褐色の長楕円形なのですが、サイズはタバコシバンムシが1.5〜3.1mm、ジンサンシバンムシが1.7〜3.6mmとジンサンシバンムシの方がやや大きい印象を受けます。触角にも違いがあるのですが、肉眼で判断するのは慣れていないと難しいです。

 

タバコシバンムシは、乾燥葉タバコの害虫としてよく知られています。
しかし、実は本種の幼虫は、乾燥した葉タバコよりも穀類や粉類、菓子類、インスタント食品(乾麺など)、香辛料、乾果、ペットフード、畳、昆虫標本、動物性繊維などあらゆる乾燥した動植物質を好んで食害します。珍しいところでは、コーンスターチを主原料とした緩衝材から発生したこともあります。

 

本種は食品加工工場や製粉工場、飼料工場、穀物貯蔵庫などで大発生することがあり、春から夏にかけてライトトラップでも大量に捕獲されることがあります。
本種成虫が異物として製品に混入することも多いのですが、それらの全てが製造現場で混入するとは限りません。本種は、都市部でも我々の周りに普通に生息している昆虫ですので、一般住宅でも普通に見られます。つまり、流通段階や消費者宅で保管中に混入する可能性も非常に高いのです。

 

本種が大発生した場合、本種幼虫に寄生するシバンムシアリガタバチ(Cephalonomia gallicola)が二次的に大発生する可能性があります。このハチは人を刺しますので、上記の工場等では多数の従業員さんが刺されるなどの問題に発展する場合があります。

 

一方、ジンサンシバンムシもタバコシバンムシと同様に広食性で、やはり乾燥植物質を好み、特に生薬や朝鮮人参の害虫として知られています。ここから人参死番虫の名前が付いたのです。稀に書籍を食害することもあります。

 

本種は、漢方薬を扱う医薬品工場の原料倉庫などで大発生することがあります。タバコシバンムシと同様に都市部の住宅地でも普通に見られますが、食品工場や製粉工場、飼料工場などの工場では、タバコシバンムシが発生するケースの方が多いと思われます。

 

両種を防除するためには、餌の除去、つまり清掃が最も重要です。これは幼虫対策になります。

 

また、両種の発生を予察するためには、専用のフェロモントラップによるモニタリングが最適です。

 

成虫の発生が確認されたらライトトラップでも誘殺することができますが、外部にいる個体をも呼び込んでしまう可能性がありますので注意が必要です。
室内で大量発生が見られた場合、必ず発生源があるはずですので、それを早期に発見の上、除去し、再発の防止に努めてください。

 

シバンムシの発生は、原材料の管理がずさんだと起こることが多いため、原料の仕入れ業者の管理方法を確認する必要があるかもしれませんし、自社の保管状況や管理体制をチェックし直さなければならないかもしれません。

 


タバコシバンムシです。

 


ジンサンシバンムシです。


タバコシバンムシ対策

ジンサンシバンムシ対策


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