寄生蜂(コマユバチ、コガネコバチ、アリガタバチなど)
我々の身の周りには、食品害虫(貯穀害虫)、乾材害虫、衣類害虫、書籍害虫など、屋内で定着可能な昆虫がたくさん存在します。
そして、これらの昆虫の全てに捕食者や寄生者がいると考えられています。
ハチの仲間には捕食者は少ないですが、多数の寄生者が知られており、これらは寄生蜂(きせいほう、きせいばち、やどりばち)と呼ばれています。
寄生蜂の体長は、ヒメバチ類のように比較的大きくて40mmほどになるものもいますが、大抵は10mm以下で非常に細かいです。
特に食品工場や穀物貯蔵庫などで問題となるのは、5mm以下の微小な種が多いです。
寄生蜂の中には昆虫の卵に寄生するものもいて、体長が1mm以下のものも少なくありません。
あんなに小さいチャタテムシの卵に寄生する種もいるというのですから驚きです。
国内では0.25mm、海外では0.1mmの種も見つかっています。
寄生蜂は害虫にとっての天敵であり、人にとっては益虫と呼べるのですが、異物混入防止の観点からはそれ自体が異物となり、製品に混入してしまう恐れがあるため、残念ながら製造工場では使用できません。
そういう意味では、製造業者にとってはアシナガバチやスズメバチなどの大型のハチに比べると微小で大量発生することがある寄生蜂の方が脅威と言えます。
寄生蜂の個体数を減少させるには、寄主昆虫の個体数を減少させるよりほかありません。
そのためには、寄生蜂の種を同定し、寄主昆虫を特定することが肝要です。
寄主昆虫判明後は、その生態に基づき個体群密度を抑制し、低水準を維持してください。
それに伴って寄生蜂の個体群密度も終息します。
食品工場や穀物貯蔵庫でモニタリングを行っている際に、ライトトラップ等で大量に捕獲されることがある寄生蜂をご紹介します。
家屋害虫の寄生蜂には、ヤセバチ科、ヒメバチ科、コマユバチ科、コガネコバチ科、オナガコバチ科、ヒメコバチ科、ホソバネコバチ科、アリガタバチ科などが知られています。
ヤセバチ科では、ゴキブリ(クロゴキブリやワモンゴキブリなど)の卵鞘に寄生するゴキブリヤセバチが有名です。
ヒメバチ科には、メイガ科にマダラメイガ亜科に寄生するコクガヤドリチビアメバチなどがいます。
コマユバチ科には問題となる種が多く、工場などでもイガサムライコマユバチ、ヒロズコガハラボソコマユバチ、シマメイガコマユバチ、イガコマユバチ、ヒラタキクイコマユバチなどがよく出現します。
コガネコバチ科は貯穀害虫に寄生する種が多く、コクゾウホソバチ、コクゾウコバチ、ゾウムシコガネコバチ、バクガコバチ、チビタケナガシンクイコバチなどがいます。
ヒメコバチ科では、コキブリコバチがよく知られています。
アリガタバチ科では、シバンムシアリガタバチ、ノコギリヒラタアリガタバチ、キアシアリガタバチ、クロアリガタバチなどが屋内で問題となります。
特にシバンムシ類に寄生するシバンムシアリガタバチは有名です。
シバンムシアリガタバチ成虫の体長は1.5〜2.0mmで、雌は翅がありませんが、雄は翅があるものもあります。
体色は黄〜赤褐色で、一見アリに似ています。
幼虫はタバコシバンムシやジンサンシバンムシなどの甲虫の幼虫に寄生して生活します。
世界各地に普通で、日本では本州以南に分布します。
シバンムシ類が大量に発生する食品工場や飼料工場で、二次的に多発生するため、製品に異物として混入したり、あるいは従業員が刺咬被害に遭うなど問題となっています。
近年は一般住宅やマンション等での被害も増えてきています。
本種は宿主となるシバンムシ類が減少すれば自然と減っていきます。
ドッグフードに発生したシバンムシとそれに寄生する寄生蜂の動画です。