床置き式粘着トラップはどこに何枚設置したら良いの?
最近、床置き式粘着トラップのポイント数(枚数)や設置場所の設定の根拠について説明を求められる機会が多くなってきています。
特に医薬品工場では必ずと言って良いほど要求されますし、食品工場や物流倉庫であっても見積書および仕様書を提出する際に聞かれる場合があります。
様々な製造工場を見る機会があるのですが、確かに床置き式粘着トラップが適当な場所に置いてあったり、数が全然足らなかったり、逆に多すぎたりして、せっかくモニタリングをしていても無意味なものになってしまっている残念な工場も見受けられます。これでは工場の防虫担当の方も報われませんよね。
一般に、床置き式粘着トラップは50〜200uに1枚設置するのが良いと言われています。
しかし、もう少し細分化しますと
・医薬品工場では10uに1枚
・化粧品や食品、フィルム等の製造エリアでは25uに1枚
・原料保管庫や物流倉庫では100uに1枚
を目安に設置するのが良いとされています。
しかし、これはあくまでも目安であり、どれほど小さいエリア(区画)であってもゾーニングされているのであれば最低1ポイントは定点設定を行い常時モニターする必要があります。
逆に、広い空間であっても作業効率が低下するような箇所であれば設置は避けるべきです。
また、床置き式粘着トラップを設置する際の考え方としては、
・(昆虫は壁に沿って移動するため)できるだけ建屋内周のコーナー部、それが無理なら極力壁沿いに設置する
・侵入経路付近では早期捕獲を予測して設置する ⇒捕獲目的で自動シャッター等の両サイドに設置するのもあり(ただしこの場合、モニタリングは片一方でOK)
・(異物混入を想定し)工程ごとに設置する
などを心掛けると良いです。
しかし、実際には製造工場内で生息が予測される昆虫類の習性や生態を考慮し、その設置箇所を決定することが重要です。
医薬品等の製造工場では、特にチャタテムシなどの内部で繁殖可能な微小昆虫の発生状況をモニターすることが重要管理項目となることから、これらの工場内部での発生を考慮してモニタリングポイントの設定を行うことが非常に重要です。
チャタテムシなどの内部で繁殖が可能な微小昆虫の場合、行動範囲が極めて狭いこと、また分布様式はほとんどの場合が集中分布を示すことから、これらの発生しやすい場所を的確に選択して設置箇所を決定し、継続的に監視することが必要です。またトラップの配置密度は、内部繁殖の危険度に応じて修正し、繁殖条件として好適な環境になると考えられる製造ライン付近などでは必然的にその配置密度を高くします。
これらの製造ラインでは、概ね各ラインの工程ごとに配置し、周辺の床面エッジ部分も忘れずモニタリングポイントとして設定しなければなりません。
クモなどの徘徊性昆虫類の生息状況を調査するためには、昆虫類が密集しやすい内周のコーナー部や製造ライン周辺、あるいはクモの餌となる外部から侵入した昆虫の侵入口、移動・分散経路などを考慮し、床置き粘着トラップを配置します。
また継続的にモニタリングを行うのであれば、配置密度を作業動線上の妨げとならない範囲で予め設定しておくと良いでしょう。
ライトトラップと同様に、製品出荷エリアなどの外部と連絡する区域では、工場内への侵入状況だけではなく、清潔エリアへの拡散の危険性を監視するため、出入り口付近だけではなくエリアの中央もモニタリングポイントとして設定します。
なお、モニタリングポイントで常軌を逸した大量捕獲等の問題が確認された場合は、その周辺や原因箇所と思われる場所、あるいは隣接した区画にも配置し、生息状況を精査します。
通常はモニタリング範囲外となっている天井裏やエレベーターピット、電気室などであっても、関連区域で問題が確認された場合はこのような後追い調査を実施します。
床置き式粘着トラップについてもっと詳しく知りたい方は下記をご参考下さい。
・床置き式粘着トラップについて
・床置き式粘着トラップを紛失させないアイデア
床置き式粘着トラップはメーカー・機種ともに様々なものがありますので、目的に応じてベストなものを選択して下さい。
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