カビとのイタチごっこにそろそろ別れを告げよう

食品を取り扱う施設におけるカビ対策

食品を取り扱う施設におけるカビ対策

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食品工場や大量調理施設、飲食店などといった食品を取り扱う施設で総合環境衛生管理を行っている方には経験があると思いますが、毎年梅雨頃になると頭を悩ませる問題があります。

 

それはカビの発生です。
カビは食品などの製品への異物混入問題を引き起こすだけでなく、製品そのものや建物などを劣化させたりもします。また、カビの産生するマイコトキシンカビ毒)による健康被害も認められています。他にも、製造エリアでカビが発生するとチャタテムシヒメマキムシといった食菌性昆虫の発生を促進してしまいますし、目に付きやすいため監査や査察の際の指摘ポイントになります。これらのことから、食品を取り扱う施設ではカビの管理は非常に重要と言えます。

 

ここでは、主に食品工場におけるカビ対策について説明します。
食品工場などの製造エリアでカビが目立ってきた際、直ちに殺菌消毒を行うことは非常に良いことで、それによってカビも減少しますし、エリア内の清浄度は高くなります。しかし、これはあくまでも一時的なものであって恒久的なものではありません。

 

エアコン等空調機器の吹き出し口や扉、窓、吸排気口などからの外気の流入、人や物の往来など、様々な要因によってすぐに再汚染されてしまいます。このような応急的な殺菌消毒⇒再汚染⇒応急的殺菌消毒⇒再汚染⇒・・・というカビとのイタチごっこを食い止めるためには、恒久的に清浄度を高く保つための防カビ対策を行う必要があります。それには、既存のカビを一旦リセットし、さらに再発生させないための抗カビ施工を行い、日常的に予防を行うのが理想です。

 

主な流れを整理すると下記のようになります。

 

@ 徹底した殺菌消毒により、製造エリア内における現状のカビを除去 ⇒ リセット
A カビの再発生防止のための防カビ施工 ⇒ 防カビ剤等の使用
B 空調コントロールの徹底 ⇒ 日常的な除湿によるカビの予防
C 空調機などの定期清掃の実施 ⇒ 日常的な清掃、洗浄によるカビの予防
D 製造環境の清浄度チェック ⇒ 定期的なモニター

 

カビの繁殖を防ぐためには、まず殺菌消毒し、カビ(菌糸と胞子)を完全に取り除かなくてはなりません。つまり、一度リセットするわけです。カビを除去するためには、次亜塩素酸ナトリウムなどのカビ取り剤を使用します。カビを除去する際は、目に付きにくい場所(マシン内部やその裏側、空調機内部など)のチェックも忘れずに行って下さい。範囲が狭ければカビ取り剤で自社でもできるかもしれませんが、例えば、(高さのある)製造エリアの天井や壁面など、範囲が広い場合は専門業者に依頼する必要もあるでしょう。

 

製造エリアのカビ除去時に忘れがちなのが空調機です。もし空調機の内部がカビで汚染されていた場合、空調機からカビの胞子が放出され、室内に撒き散らされてしまう可能性があります。こうなるとまた一からやり直しになりますので、空調機の洗浄も忘れずに行いましょう。

 

その後、天井・壁・床に対して防カビ剤を塗布する、あるいは室内全域に対して燻煙剤で空間処理するなどの直接的な防カビ施工を実施します。こうすることでカビが発生しにくい環境を造るわけです。

 

防カビ処理が終わったからといって気を抜いてはいけません。間接的なカビ対策が待っています。むしろここからが重要なのです。カビを再発させないために、予防のための日常的な対策を強化していかなければなりません。

 

カビの生育には温度・湿度・養分が必要不可欠で、それらに適した一定の条件が揃うとすぐに繁殖し、製造エリア内の清浄度を下げてしまいます。特に、高温多湿だとあっという間に蔓延してしまいます。好適条件が揃った時の生育の速さは脅威のスピードと言えます。一般に、カビは相対湿度60%を越えると発生しやすくなり、80%を越えると大繁殖するため、43%以下の状態を毎日3時間以上保つことが出来れば繁殖しないと言われています。

 

(もし可能であれば)このことを考慮して室内の温湿度を制御すると容易にカビを防ぐことができます。室内全域を制御するのが難しい場合でも、結露しやすい箇所などに対して換気扇や扇風機、除湿機などを利用して除湿すると効果的です。また、カビはちょっとした養分からも繁殖してしまいますので、清掃や洗浄によって汚れをこまめに除去することは非常に重要と言えます。日常的に消毒用アルコールなどを噴霧することも有効です。

 

また、製造エリア内のカビによる汚染度合いをモニターするためにも、環境微生物(落下菌や空中浮遊菌など)の測定を定期的に実施し、日頃から清浄度をチェックしておくと問題発生時に対処しやすくなります。



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